独り勝ち・『ゼクシィ』商法の光と影 今や強者の驕りも垣間見え…

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独り勝ち・『ゼクシィ』商法の光と影、今や強者の驕りも垣間見え…

 

柳信幸 東京BMCサポート社長

 

結婚情報誌『ゼクシィ』は1993年5月24日に創刊された。首都圏版から地域を拡大し、現在では鳥取・島根・沖縄県を除いて、全国を制覇している。ゼクシィが発売された93年とは、いわば“ブライダル革命”。それほど業界を激変させたからだ。

現代のような結婚式と披露宴が普及したのは、60年に日活ホテルで執り行われた、石原裕次郎氏と北原三枝さんが原型といわれている。日本の結婚式とは両家が主催する披露宴で、結婚する新郎新婦を招待客にお披露目するスタイルだ。結婚の決まったカップルは親に結婚を報告すると、親の指示でホテルか専門結婚式場に行かされ、式場選びは両家両親の意向で決められた。当時のホテルや専門式場の価格はすべて定価で受け入れられていた。

中でもバブル期のブライダルビジネスは空前の好景気。結婚する子どもを持つ親は、1年後のお日柄のいい日に披露宴会場を押さえるため、親が徹夜で式場に並んでいたほどだ。当時の式場支配人は、平日はゴルフとカラオケの接待を受け、仕事は土日だけという生活をしていたという。だがそんな好景気はバブル崩壊で消えてなくなった。

ハウスウエディング登場 広告しないと客が来ない

結婚するカップルが昔のように来なくなり、ホテルや結婚専門式場が困り果てていたとき、ゼクシィが登場する。創刊直後の業界の評価は「あんな雑誌に広告を出すのはもってのほか」だった。これまで業界のタブーだった、結婚式と披露宴の料金見積もり“比較表”の提出を、義務づけたからだ。特に結婚式が高額商品として貢献率の高かったホテルは、一斉に掲載を拒否した。

そうした中、ゼクシィはゲストにじわじわ支持されていく。結婚式場を決めるのに、自宅で好きなときに比較できたためだ。従来だったら、わざわざ駅前や百貨店にある婚礼専用カウンターに出掛け、エージェントから接客を受けながら比べていた。それが誰にも会わず、自由な時間に、式場を比較検討できるようになったのである。ゲスト側でいちばん気になる「おカネ」の問題を公にしただけでなく、式に関するノウハウを雑誌に掲載したのも、部数を上げた要因だった。

 

 

 

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