プロ野球「戦力外」から這い上がった男の心魂 このメンタリティは一般社会にも深く通じる

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今年も多くの選手がプロ野球界を去った。「戦力外通告」のわずか一言で、一瞬にして職を失う。そんな選手たちの野球人生最後の時をドキュメンタリーで描いてきたTBSテレビ「プロ野球戦力外通告~クビを宣告された男たち」が、今夜(12月30日)10時から通算12回目の放送を迎える
今年は本編に収まりきらなかったサイドストーリーを2回(「プロ野球を2度クビになった男がつかんだ宝」「プロ野球『トライアウト』一発逆転勝負の本質」)にわたって東洋経済オンラインで配信してきたが、本編放送直前の特別企画として2014年のトライアウトから見事、復活を遂げた男のストーリーをお届けしよう。
八木智哉選手は今年、中日に移籍して活躍した(撮影:大澤 誠)

このテストの結果で、その後の人生が決まるという試験会場の控え室。大勢の受験生と一緒にいると想像して欲しい。あなたなら次のどのタイプになるだろうか?

「ものすごく集中してるけど、うつむいてナーバスになってる人。とりあえず受けてみて受かればいいなと楽天的に考えている人。俺はこれに懸けてどうにかして受かりたいんだって雰囲気の人。だいたい3つくらいのパターンに分かれていましたね」

1年前は野球人生の「どん底」にいた

自ら置かれていた緊迫した状況を、そう冷静に振り返る男がいる。中日ドラゴンズの八木智哉投手、32歳。ちょうど1年前、彼はプロ野球人生を懸けて、一発勝負のトライアウトのマウンドに立とうとしていた。オリックスから非情の戦力外通告を受け、まさに野球人生の「どん底」にいた八木。そのトライアウトのロッカールームで、上記3タイプの選手を目の当たりにして、彼はある行動に出た。

ほんの1年前は、瀬戸際に立たされていた

「なんだか、ロッカーから出たくなったんですよ。あの場に居られなかった。外野に行ってギリギリまで体を動かしたり、ブルペンの雰囲気を見に行ったり。音楽聴きながら自分のリズムを作っていましたね。抑えるか打たれるかで、生き残れるか生き残れないかの空間じゃないですか。勝負をするわけだから、ロッカーで他の選手とは喋りたくなかったんです」

八木が回顧するロッカーの様子。プロ野球合同トライアウトの熾烈な舞台裏は、そんなピリピリとした空気感に包まれていたのだった。

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