三菱「パジェロ」は本当に終わってしまうのか 次期型開発中止の観測が浮上した背景を探る

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いつしかパジェロは「伝統的」という形容詞とともに紹介されるSUVとなった。しかし多くの日本車は、モデルチェンジごとにプラットフォームを一新することはなく、2回に一度のタイミングで刷新する。パジェロもそうで、2006年発表の現行4代目は顔つきを初代や2代目に近づけ、クリーンディーゼルエンジンを投入したが、プラットフォームは3代目を踏襲していた。

販売台数は、2014年には2000台までに

ゆえに流れを上向かせることはできず、最盛期には8万台以上を記録した年間販売台数は、2014年には約2000台にまで落ち込んだ。これでは次期型開発中止の噂が流れても仕方がない。しかし三菱自動車工業周辺の人間に聞くと、次期型の方向性が定まっていないというのが正直なところらしい。

ASEAN地域で人気の「パジェロスポーツ」

確かに進化の選択肢はいくつかある。ASEAN地域で人気の「パジェロスポーツ」の導入は考えていないそうだが、日本だけでなく欧州でも人気のアウトランダーPHEVとプラットフォームやパワートレインを共有する手法も考えられる。完全移行がリスキーであるなら、スズキ・エスクードのように新旧を併売することもできる。

2013年に生産中止したパジェロミニについても、旧型のような専用設計ではなく、スズキ・ハスラーのように前輪駆動乗用車とのプラットフォーム共有という手法で復活するという噂がある。当然ながら日産自動車との共同開発となり、日産版も登場するだろう。

つまり現行パジェロの次期型の開発がストップしても、違う形でパジェロが登場してくることは十分考えられる。

パジェロのルーツといえるジープは、オリジナルの系譜を継承するラングラーを作り続ける一方で、フィアット500Xとプラットフォームやパワートレインを共有するレネゲードを発売し、人気を得ている。その一方でジャガーやベントレーなど、新たにSUVに参入するブランドも多い。

現代のブランド戦略とは、そういうものだ。パジェロも時代の流れに合わせて、もっと柔軟に展開して良いのではないかという気がする。

森口 将之 モビリティジャーナリスト

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もりぐち まさゆき / Masayuki Moriguchi

1962年生まれ。モビリティジャーナリスト。移動や都市という視点から自動車や公共交通を取材。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。著書に『富山から拡がる交通革命』(交通新聞社新書)。

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