(第60回 最終回)日本は人の「出」「入」で開国を目指すべきだ

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中国人は中国よりアメリカを信頼

今年の4月、共産党最高指導部入りが確実視されていた中国・重慶市のトップ薄熙来が突然失脚し、妻の英国人殺害容疑が明らかになるという異常な事件が起こった。中国の支配層に関してこれまでも漠然と考えられていたこと(民主主義国家ではありえない異常な権力集中、それによって生じるエリート階層の汚職・腐敗、国有企業との緊密な関係、不正蓄財等々)を、この事件が極めて具体的な形で示したことは、いうまでもない。

私が注目したのは、それだけではない。薄の腹心であった王立軍・前公安局長・副市長が、四川省成都の米国総領事館に駆け込み、庇護を求めた事実だ。これによって、事件が明るみに出ることになった。薄の親族の犯罪を捜査してしまったため、身の危険を感じてアメリカ亡命を図ったとされる。

ここで重要なのは、「中国人がアメリカに頼った」という事実だ。ここに、米中間の関係が象徴的に表れている。中国人は、自国の捜査機関には政治的中立性を期待することができない。だから、アメリカに頼る。単にアメリカが強いというだけでなく、政治的に信頼できると中国人が認めていることになる。

事実、重慶市は70台あまりの公安車両を300キロメートル離れた成都まで派遣し、王を捕らえようとしたが、アメリカは王を重慶市には引き渡さず、北京に移送した。アメリカ亡命は認められなかったものの、秘密裏に薄に処分されるという事態は免れえたわけだ。

天安門事件の元学生リーダー王丹もアメリカに亡命した。ほかにも、中国からアメリカへの政治亡命者は多数いる。アメリカは、経済的チャンスを追求する人々の新天地になっているだけではなく、政治亡命者のセーフヘイブンにもなっている。

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