邦銀にも波及した欧米金融スキャンダル

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米当局はシティのクラブ談合体質を、英当局はウォール街の強欲主義について非難している。現在、LIBOR改革案については英米双方の当局が検討中だ。

ほかの邦銀はないのか

LIBOR問題は今のところ、個人の不正として内部処分をした銀行が圧倒的に多い。だが、どこが第2のバークレイズになってもおかしくない。相場操縦として刑事訴追の対象になりうるし、多額の損害賠償訴訟にさらされる可能性もある。

三菱東京UFJも現地スタッフ個人の処分で済むのか、どこまで汚染が広がっているのかわからない。広がり次第では、欧州本部や東京本社の幹部も責任を問われる。調査の進展に薄氷を踏む思いだろう。

金融庁幹部も昨年、ユーロ円TIBOR(東京銀行間取引レート)をめぐり、UBS、シティをいち早く処分し邦銀の関与はない、としていただけに怒り心頭だ。当初、邦銀が当事者になる可能性が低いとみられていたのは、金融危機下でも調達難に見舞われず、金利を低く見せる必要がなかったためだ。だが、現地スタッフのグリップが弱い状況下では、より悪質な儲けのための不正の可能性があることを露呈した。

三菱東京UFJにとっては、欧米金融機関のピンチは対岸の火事でビジネスチャンスだったはず。ところが、一転、当事者になってしまった。

円LIBORでは、三菱東京UFJ、みずほコーポレート銀行、三井住友銀行、農林中央金庫の邦銀4行を含む13行がメンバーになっている。LIBORは仕組み上、一行だけでは基準金利を動かせないので、結託する可能性が高いとみられている。今回の件は現地のFSA関係筋から漏れたが、調査は全金融機関が受けており、ほかの邦銀にも疑惑が及ぶ可能性は十分にある。

(大崎明子 撮影:風間仁一郎 =週刊東洋経済2012年8月25日特大号)

記事は週刊東洋経済執筆時の情報に基づいており、現在では異なる場合があります。
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