テルモ、新製品は医療機器の歴史を変えるか 新宅社長が狙う"輸出入の逆転"とは?

拡大
縮小

――最大市場の米国でどう戦う?

今夏に投入した脚の血管用のステントを皮切りに、治療用の機器を広げていく。現在、米州の売上高が全体の3割だが、米国である程度のプレゼンスを作り上げ、もっと拡大していかないと競合に勝てない。

米国では、買収した南カリフォルニアの会社を核に開発体制を拡充する。同社は開発スピードが非常に速く、新製品が次々に出てくる。社内外から必要な技術を持った人を即座に集められるからだ。このような組織を超えたネットワークに、イノベーションの本質があると思う。

――テルモにおいて成功したイノベーションは?

ハートシートや冠動脈ステントの新製品もそうだが、テルモがずっと行ってきた、製品販売とトレーニング提供を並行して行う取り組みもイノベーションの一つだと思う。この方法によって、これまで一般的だった脚の血管からではなく、手首の血管から治療するカテーテル製品が、米国を中心に非常に伸びている。

医療機器は、製品が優れているだけでは治療効果が出ない。製品の使用方法のトレーニングが伴って初めて、効果の高い安全な治療ができる。手首からのカテーテル治療は特にそうだ。手首から心臓まで到達させるには、カテーテルの細さやしなやかさとともに、医師の技量が必要になる。コストはかかるが、トレーニングを提供していることは医師から評価され、販売増加に貢献している。

さらなる規模拡大の策は?

新宅祐太郎(しんたく ゆうたろう)/1955年生まれ。東京大学卒業後、東亜燃料工業入社。99年にテルモ入社、2010年から現職

――2012年にオリンパスに統合提案を持ちかけていた。規模拡大の考えは。

長期的に考えると規模は必要だが、当面は競争力のある事業構成の構築に注力する。欧州の病院向け基盤医療器事業をはじめとする競争力を失ったものを整理し、競争力あるものをより大きくしていく。

カテーテル治療では世界3位以内になって、欧米トップ集団の一角に入りたい。米国企業を中心に数兆円規模の再編が進むが、そこと同じ土俵で戦うのは得策ではない。

オリンパスとの話は白紙状態だ。両社が事業を強化して一定の成果を収めたとき、日本連合として、あらためて世界でプレゼンスのある会社になろう、という話が出るかもしれない。

(撮影:梅谷秀司)週刊東洋経済12月19日号、この人に聞くに加筆)  

長谷川 愛 東洋経済 記者
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