失敗しない就農ガイド、新規就農者の7割が農業だけでは生活できていない

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その理由は、やはり就農後の大変さだろう。農家の生活に順応するだけでなく、資金や土地の確保など、さまざまなハードルが横たわる。

作り方だけではダメ 地域挙げて就農者を支援

「就農が増えてもその後のサポートがなければ離農者を生み出すだけ」というのが多くの関係者の意見だ。その原因の一つとして研修や農業学校では技術的な研修は行われるが、「農業で生計を立てる方法」について教えられない点が挙げられる。「経営者」としての修練を欠いたままの農業デビューは危険だ。

そんな問題点に早くから気づき、対策を講じてきた地域がある。

静岡県伊豆の国市。伊豆半島の北部、新幹線を使えば、東京から1時間半で到着する。山々に囲まれた平野部では稲作やハウス栽培が盛んに行われている。

JA伊豆の国は、静岡県の「がんばる新農業人支援事業」を通じて応募してきた新規就農希望者を、研修生として受け入れている。今年も5人を受け入れ、農家で栽培の研修を行っている。作目はハウス内で栽培するミニトマトだ。

JA伊豆の国では、研修生が同地域内で就農することを前提に、さまざまな支援を行っている。特徴的なのは、受け入れ農家の指導体制と、就農後の支援にある。

独立後も受け入れ農家による技術支援を可能にするため、受け入れ農家のすぐ近くのハウス施設を貸し与えている。肥沃な一等地で、土地の生産性も高い。「近くで見ていれば失敗することはない。研修の延長で見ることができる」と、受け入れ農家の鈴木幸雄氏は語る。

さらに、就農後の経営についても目を配る。家族3人が農業生産だけで生活するには農業所得500万円は必要。「施設園芸の利益率は30%程度。逆算すると500万の3倍、1500万円の売上高が必要。ミニトマトなら2反(約20アール)でその売り上げに届く」(鈴木氏)といった計算に基づいたプランを立てて就農させている。

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