勝ち組負け組の対立を通して、人間のアイデンティティの拠り所はなにかを表現したかった--映画『汚れた心』ヴィセンテ・アモリン監督

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一方で、ある人たちは同時に自分たちのアイデンティティを残したいと考える人もいる。40年代ほどの過激さではなく、ブラジル文化と融合しつつ保存していこうと考えているようです。

--今回、日本人俳優を起用して、セリフのほとんどが日本語でしたが、言葉で苦労しませんでしたか?

日本の役者に対する、ポジティブな面がよく語られますが、その理由が理解できました。感情の入れ方、演技の的確さというのは、「刀のように鋭い」というようなイメージでした。
 
 最初はキャストを決める前まで、言語の問題で、大変なことになるのではと思っていました。ですが、実際には、彼らがあまりにも真剣にやってくれたために、ブラジルに来てもらう前からとても強いつながりを持つことができました。
 
 撮影の前のリハーサルもしっかり組めるなど、困難はまったくありませんでした。つねにコラボレーションをする姿勢でいてくれて、映画の中のあらゆるシーンや撮影現場では、つねに自分たちにも関係がある、という意識で動いていました。日系2世の役者の演技やセリフを助けてくれたり、セットに対する指摘とか映画の中のあらゆる部分に関わってくれたりしました。

Vicente Amorim
 1966年オーストリア生まれ。短編映画のほか、CMやミュージック・ビデオ監督を中心に活躍。短編ドキュメンタリー『2000 Nordestes』は、ユネスコから「Quality of Content Seal」賞を受賞。『Oi ビシクレッタ』(03)で長編映画デビュー。国家社会主義が台頭した時代のドイツを舞台にした代表作の『善き人』(08)は多くの国際映画祭で出品され、ブラジリア国際映画祭で最優秀監督賞を受賞。実父はセルソ・アモリン元ブラジル外相。

(聞き手:宇都宮徹 撮影:梅谷秀司 =東洋経済オンライン)

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