【産業天気図・損害保険】不払い対策は一段落。環境厳しいが増収増益は確保

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国内の不振を海外で挽回--。損保各社を取り巻く環境は07年度後半から08年度にかけても変わらない。無事故割引の進展に伴う保険料の単価下落、若年層の車離れ、普通乗用車から軽自動車へのシフトなど、各社主力である国内の自動車保険を取り巻く環境は厳しい。実際、07年度上期の国内新車販売台数は、27年ぶりの低水準を記録するなど、自動車販売は不振を極めている。結果、各社は海外事業への取り組みをより強化させている。
 07年9月中間期の上場損保7社の業績は、保険金の売上高にあたる正味保険料が前年同期比3・9%の増収となり、経常利益も同22・1%の増益となった。全体の正味保険料の増収を牽引したのはミレアホールディングス<8766>と三井住友海上火災<8752>。ミレアは日新火災の連結子会社化と海外保険子会社が、三井住友海上も海外子会社が好調を維持したことが大きい。
 経常増益となった大きな要因は、台風など大型の自然災害がなく支払い保険金が減少したこと、利息・配当金収入など資産運用が好調だったことが挙げられる。特に前期は06年9月に襲来した台風13号の影響により業界全体で1200億円にも膨らんだ支払い保険金が剥落したことが効いている。
 07年度下期から08年度上期にかけ、各社から補償内容や特約をスリム化した新商品が投入される見通しで、商品改定に伴い国内の正味収入保険料が下支えされる可能性が高い。さらに07年度に不払い対策のために計上されたシステム経費等も徐々に減少していくため、08年度の上場損保7社計の業績は、正味収入保険料が前期比2・9%増、経常利益が2・6%増と、伸び率こそ鈍化するものの引き続き増収増益が見込まれる。
 ただ、気がかりな要因が損害率(正味収入保険料に対する〔正味支払い保険料+損害調査費〕の比率)の上昇だ。07年度上期の損害率を見ると、日本興亜損保<8754>とあいおい損保<8761>、富士火災<8763>は前年同期比で小幅低下したが、ほか4社は小幅上昇。ただし、ニッセイ同和は収入保険料そのものが減収となっているため、見かけより損害率が大きくなっている可能性がある。だが、損保ジャパン<8755>を除き、正味保険料が増収となっている各社の損害率が上昇しているということは、保険金の支払いが甘くなっている可能性も考えられる。損害率の上昇傾向が今後も続くようであれば、業績の下押し要因となることに留意が必要だろう。
【筑紫 祐二記者】

(株)東洋経済新報社 四季報オンライン編集部

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