LIXIL「プロ経営者」、不可解な退任劇の裏側 辞めたのか、辞めさせられたのか

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また経営幹部などの要職に、GEやソニーといった企業から人材を集めたほか、既存社員の中からも若手や女性を抜擢。泥臭さが否めなかった社風と対外的イメージを一変させた。これらは経営のプロと呼ぶにふさわしい、手腕のたまものと評価できるだろう。

破産したジョウユウはいまだに営業を継続。創業一族の蔡氏(写真左)は、11月の中国での販売イベントにも姿を見せた

だが一方で、買収戦略の中では蹉跌も生じた。最大の失敗は、グローエ買収に伴って傘下に収めた、中国の水栓金具メーカー・ジョウユウの粉飾決算だ。創業者の蔡親子によるとされる巨額の簿外債務が発覚、上場していたドイツで2015年5月に破産処理を行い、LIXILは関連して660億円もの損失を被った。

さらには前代未聞にも、ジョウユウは「ドイツにおける破産処理は中国での経営に影響しない」と、一方的に宣言。創業一族を経営幹部に据えたまま、現在も中国で経営を続けている。LIXILは債権約360億円の回収に乗り出しているものの、もはや糸の切れた凧である、ジョウユウと創業者親子が経営資源や個人資産から返済額を捻出するとは、期待しにくいのが現状だ。

目利き力の問題

M&Aによる失敗は、通常、収益向上策が計画通りにはいかなかったという、買収後の経営力不足によるもの。だがジョウユウの場合、そもそもが負債まみれの”まがい物”であり、現地経営陣も意思疎通が困難な曲者である。つまり、本来買うべきでない企業を傘下に収めてしまったという、目利き力の問題なのだ。

にもかかわらず、M&A担当の筒井高志取締役や、買収前からジョウユウの監査役会メンバーで経営実態を把握できたグローエのデイビッド・ヘインズCEOは、マネジメントの資質と進退を問われることなく、3カ月間の報酬削減を受けただけである。

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