問題多い「政府の投資回収が狙い」のJAL再上場--再上場を急ぐより経営が「逆戻り」しない体制構築が先決《小幡績の視点》

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今回の再上場では、資金調達のための新株発行はせず、企業再生支援機構が持ち株を売り出すだけである。ともかく早く政府系ファンドの産業再生支援機構が株式売却によるキャピタルゲインを目指している。そのための上場なのだ。

政府が利益を上げることは良いことだが、重要なのは将来である。将来とはJALの長期的な経営である。この2年は、危機感を共有し、稲盛氏の存在や、社会的な環境から、全力でのコスト削減、意識改革が進んだ。それは素晴らしい。

しかし、これが、再上場し、稲盛氏も抜け、社会的なプレッシャーも弱まるということになると、破綻と言う結果になった悪いJALに逆戻りしてしまうのではないか、という懸念がある。

今後も、改善されたJALの経営を今後も維持するために、再上場は利用されるべきである。

具体的には、今後の経営陣や株主が過去のJALとは異なった構造となり、破綻したような経営には逆戻りしないということが外部からも認識できるような体制を構築するべきである。

その意味で、今回のビジョンなき、単なる政府の投資回収という目的の再上場は、このままでは望ましくないと思われる。至急、何らかのプランを加えるべきである。すなわち、今後、ガバナンスを加えることができる経営陣と株主構成にするべきである。


小幡績(おばた・せき)
株主総会やメディアでも積極的に発言する行動派経済学者。専門は行動ファイナンスとコーポレートガバナンス。1992年東京大学経済学部首席卒業、大蔵省(現財務省)入省、1999年退職。2001~03年一橋大学経済研究所専任講師。2003年より慶應大学大学院経営管理研究学科(慶應義塾大学ビジネススクール)准教授。01年ハーバード大学経済学博士(Ph.D.)。著書に、『すべての経済はバブルに通じる』(光文社新書)、『ネット株の心理学』(MYCOM新書)、『株式投資 最強のサバイバル理論』(共著、洋泉社)がある。


撮影:尾形文繁
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