スペイン、政権発足が遅れ2カ月後に再選挙も 国民党の議席大幅減、連立協議は難航

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他方、左派勢力が政権を発足するのも容易でない。反緊縮色の強い新興の左派政党「ポデモス(Podemos)」が事前の世論調査を上回る支持を集めたが(50議席程度の獲得予想に対して実績は69議席、率にして20.7%)、 「社会労働党とポデモスの合計では160議席で、過半数に満たない。旧共産党系の「統一左翼(IU)」や左派系地域政党が加わり、左派が総結集しても173議席で過半数には届かない。

左派勢が政権を発足するためには、 国民党政権の打倒を目指して中道派の「市民」が左派勢力に加わるか、カタルーニャの自治拡大や独立要求の受け入れを条件に同州の右派政党が左派支持に回る必要がある。新議会は総選挙から25日以内、すなわち来年1月14日までに召集される(憲法68条6項)。

政権の行方は不透明

総選挙の結果を踏まえ、国王は議会の議長などと相談のうえ首相候補を指名する(同99条1項)。この際、首相候補 は総選挙で最多票を獲得した政党から選ばれる必要は必ずしもない。連立協議の結果などを踏まえ、政権 発足が見込まれる政党から首相候補を指名することになる。指名された首相候補は、発足を目指す政権の政策指針を示し、議会の信任をなければならない(同99条2項)。

信任投票で議会の絶対過半数(議員 定数の過半数)が信任すれば、国王は同候補を首相に指名する(同99条3項前段)。信任投票で議会の絶対過半数が得られない場合、前回投票から48時間以内に再び信任投票を行い、議会の単純過半数(投票総 数の過半数)が信任すれば、国王は同候補を首相に指名する(同99条3項後段)。2回目の投票でも信任されない場合、同じプロセスを繰り返す(同99条4項)。初回の信任投票から2カ月以内に信任されない場合、国王は議会を解散し、再選挙が行なわれる(同99条5項)。

今回の選挙結果を受け、総選挙後の連立協議の難航は避けられない。地域独立の動きも相俟って、どのような政権が誕生するかは不透明な情勢だ。右派・左派勢力の議席数が極めて拮抗しており、政権発足ができないまま2カ月が経過し、再選挙となるシナリオの確率が増している。

田中 理 第一生命経済研究所 主席エコノミスト

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たなか おさむ / Osamu Tanaka

慶応義塾大学卒。青山学院大学修士(経済学)、米バージニア大学修士(経済学・統計学)。日本総合研究所、日本経済研究センター、モルガン・スタンレー・ディーン・ウィッター証券(現モルガン・スタンレーMUFG証券)にて日、米、欧の経済分析を担当。2009年11月から第一生命経済研究所にて主に欧州経済を担当。

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