学芸大は挫折した元エリートが住む街だった 41歳の拓哉に訪れた、再度の挫折と転機

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最終的には「そんなに金のことを言うなら、無理に働いてもらわなくてもいいよ」と言われ、なんだかやる気がなくなりました。虚しさを覚えましたね。

結局僕が40歳の時に5MINUTESは上場しました。公募時時価総額100億円に対して、初値で300億円の時価総額を付けていました。時代の寵児としてタケシはもてはやされて、彼は公募時の売出しで5億円程度のキャピタルゲインを得ていたようです。

そして、ハローワーク通いの日々

ヘッドハンティングも思ったほどこなかった。僕に実力がなかっただけ……

39歳での5MINUTESの退社。上場直前の企業から経営幹部が抜けるというのは、世間的にはネガティブな見られ方をするようです。僕くらいの立場であれば、ヘッドハンティングとかたくさん来てもいいはずだと思っていたのですが、思ったほどオファーはありませんでしたね。

ちなみに、BeNAから転職してきた僕の後任のCOOはストックオプションをもらっていたようです。風の噂によると、タケシは僕の働きに満足していなくて、ストックオプションを与えないことで僕が出て行くように働きかけたようです。「本当に抜けて欲しくない人材だったら、意地でも引き止めるさ」そう彼は社内に漏らしていたようです。僕に実力がなかっただけですね。情けない限りです。

春香は僕が辞めた後も5MINUTESで奮闘していました。タケシと揉めて会社を飛び出し、精神的に疲弊していた僕に、「しばらく充電して次に何をしたいかゆっくり考えるといいよ」って言ってくれました。

彼女の収入だけに頼るわけにはいかず、とはいえすぐに転職する当てもなく、ハローワークに半年ほど通いました。失業手当で前職の月収の6割程度が給付されます。すばらしい制度ですね。

さすがにハローワークに通う身で、春香の収入があるとはいえ、広尾のビンデージマンションに住み続けるわけにもいきません。家賃を抑えるために、引越しをすることにしました。

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