キャリア女性によるキャリア女性のためのワンピース--「kay me」のスピード感《それゆけ!カナモリさん》

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■半径5メートルでの実証調査

 毛見の最初の会社であるベネッセ。女性の多い会社としても知られているが、その元同僚にも同窓会で商品が出来上がるまでの間にヒアリングを行った。その結果、服のタイプと値ごろ感は大きな賛同を得られた。手応えがさらに強まった。

商社とのバリューチェーンが動きだし、商品が完成した。そこで毛見は「試着会」の開催に動いた。商品を30着制作してFacebookで来場者を募り、ホテルの一室を借りて試着会を行ったのだ。「kay me」ブランドが世に出た瞬間である。

試着会を開いた意義は大きかった。参加者が服を気に入っただけでなく、参加者のあいだに「こういう服が欲しかった」「このニーズは私だけではなかった」という共感が広まった。その場で「売って欲しい」という要望が相次ぎ、全着が完売した。そこに至って大きな手応えを感じたという。

ここでも注目すべきは、スピード感を重視した「自分から半径5メートル以内」での調査・検証だ。ビジネスの確度を高めるためには調査は欠かせない。しかし、そこで時間を費やしてスピード感を失えば本末転倒になる。最初の30着が売れたのは、事業発案からわずか3カ月目のことである。

■購入率100%!「試着便」で利便性を向上

 「kay me」ブランド販売開始から8カ月後の2012年2月。それまで銀座7丁目のマンションの一室に開いていた予約制サロンの限界が露呈し始めていた。ターゲット顧客であるキャリア女性の買い物時間と運営時間が合わないのである。また、地方からの引き合いも多くなってきた。そこで、顧客の元へ商品数着を届け、気に入った商品を購入してもらうという「無人外商サービス」である試着便サービスを始めた。米国の靴の通信販売で有名なZapposなどと同様、不要であれば返品自由というしくみだ。サービスを始めてみると、「手持ちの服と合わせて試せる」「家人の意見を聞くことができる」と大好評であり、数着送った商品の中から必ず1着は購入してもらえるという結果になったという。

ここで注目すべきは、顧客に対して実現しているのは「利便性の向上(Time saving)」だけではないということだ。実は、利便性を上回る「痒いところに手が届く」=「私のニーズに細かく対応してくれている」という「心理的な満足感(Peace of mind)」が実現されているのである。店舗の悪条件を克服するために、顧客の立場で考えたサービスの結果である。

 

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