【産業天気図・証券業(既存大手中心)】サブプライム問題の懸念晴れず、「曇り」予想を踏襲

証券各社の2007年9月中間決算は、ネット専業含む上場23社のうち14社が増収増益だった。一見、業績は堅調だが、先行きには不安材料が横たわっている。いまだくすぶる米国のサブプライムローン(信用力が低い個人向け住宅融資)問題の影響だ。既存大手を中心とする証券業の07年度後半、08年度の天気見通しは、前回同様、「曇り」とする。
 日経平均株価は今年2月の中国発世界同時株安後、新年度入りを挟んで上昇。6~7月には1万8000円台に乗せた。が、サブプライムローンの焦げ付き問題に端を発した世界的な信用収縮が発生。平均株価は一気に1万5000円台前半まで下落した。
 その後、投資家のリスク許容度が徐々に回復したが、11月に入り欧米主要金融機関でサブプライム関連の追加損失が相次ぎ明らかになると、再び株価は急落。11月21日には年初来安値1万4837円まで突っ込んだ。
 足元を見れば、市況は落ち着きを取り戻しつつあるが、証券会社の主要収益源である株式委託手数料収入は弱含みだ。IPO(新規株式公開)や増資引き受けなどといった法人業務も低調。サブプライム問題を材料に、株式市場から再び資金が逃避する懸念も払拭されていない。9月中間決算は株手数料の収益依存度が高い4社(マネックス・ビーンズ・ホールディングス<8698>、カブドットコム証券<8703>、岩井証券<8707>、インヴァスト証券<8709>)が減収減益となったが、これらの企業は下期にかけても業績は冴えないだろう。
 一方で、投資信託や国内外の債券などの金融商品の販売は、個人の金融資産が「貯蓄から投資へ」と向かう中、基本的には増勢が続く。株手数料の落ち込みを、投信や債券などで補う収益構造が確立されつつある証券会社は、来08年3月期通期も増収増益を保ちそうだ。ただ、サブプライムショックを機に、投信や債券などの購入を手控える投資家も出ている。『会社四季報』08年新春号(08年1集)では、証券各社の08年3月期業績について、基本的に上期よりも下期が弱含むという予想を立てている。08年1月に上場廃止になる日興コーディアルグループ<8603>を除く上場22社のうち、前号比で増額は中国株・投信が好調な東洋証券<8614>1社のみ、減額は13社にのぼった。ただ、減益予想は7社のみだった。
 サブプライム問題で直接的な影響を受けた上場証券会社は、野村ホールディングス(HD)<8604>のみ。非上場では、みずほフィナンシャルグループ<8411>のみずほ証券の損失が大きかった。米国でサブプライム債権の証券化ビジネスを展開していた野村HDは、総額1456億円(08年3月期は約1000億円の見込み)の損失計上を余儀なくされた。英国でサブプライム債権を含む証券化商品を組成・販売していたみずほ証券も、現段階の試算で08年3月期に1350億円の損失が発生する見込みだ。
 足元の業況は別として、今後、証券業界の注目点となるのは、銀行グループによる証券業の囲い込みだろう。
 首相の諮問機関である金融審議会は、銀行と証券会社間の業務隔壁(ファイアウォール)を緩和する案を、07年内にも取りまとめる最終報告に盛り込む見込みだ。現在は禁止されている、同じグループ内の銀行と証券会社による法人顧客の情報の共有化が原則として認められるほか、役職員の兼務も解禁される見通し。金融庁は金融審の方針に沿って、金融商品取引法の改正案を08年の通常国会に提出する方向で準備を進めている。早ければ09年にも、ファイアウォール緩和が実現しそうだ。
 この動きをにらんで、すでに大手銀行グループは動きはじめている。
 三井住友フィナンシャルグループ(SMFG)<8316>が06年にSMBCフレンド証券を、07年9月には三菱UFJフィナンシャルグループ(MUFG)<8306>が三菱UFJ証券を、それぞれ100%子会社化した。08年1月には、国内初の三角合併方式となる株式交換で、日興コーディアルグループ<8603>が、米シティグループの完全子会社となる。また、MUFGは、ネット専業のカブドットコム証券<8703>への出資比率を07年4月に40%超に高めたばかりだが、12月19日を期限とするTOBでさらに50%超にまで持ち株を増やす計画だ。MUFGは、ネット専業で独立系の松井証券<8628>とも資本提携の交渉を続けている。
 一方、08年1月に予定されていたみずほ証券と新光証券<8606>の合併は、みずほ証券の巨額損失問題で08年5月に延期されたが、今後、銀行業と証券業の規制上の垣根が緩和される見通しのなか、大手銀行グループの証券分野への侵攻は強まるばかり。野村HDや、SMFGと法人部門の合弁会社を持つ大和証券グループ本社<8601>が、今後どういう手を打つかが注目される。本格的な業界再編の火種になる可能性もある。
【武政 秀明記者】

(株)東洋経済新報社 四季報オンライン編集部

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