相続税対策で借金苦!実家相続の「落とし穴」 慣れないマンション経営で大変なことに

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また、マンション・アパート経営にはやはり向き不向きがあると思います。向いていると思えるのは、簡単に言えば株価を毎日チェックできるようなマメな人。ただ、ご自分がそういうタイプでも相続するお子さんにその素質があるかは別になりますので、そこも考えなければいけませんね。

普段から親子で不動産に関する話し合いを

これを読まれている読者の方は、お子さんの立場の方が多いかもしれません。高齢のご両親が家や土地を持っている場合、それは必ず相続として自分の身に降りかかってくる問題になります。「うちの土地は狭いから大丈夫だろう」と思う方もいるかもしれませんが、アパート経営は20坪くらいからできるもの。建て替えを提案する業者はだいたい金融業者とタッグを組んでいますから、親御さんが「でも借り入れできるかな?」と言えば「ご心配なく。その点はお任せください」となるわけです。

このケースのようにならないために、何かあれば両親が逐一あなたに相談するような関係性を構築しておきたいものです。親というのは自分が高齢者である自覚が薄く、いつまでも元気なつもりでいるものですから、こちらがあれこれ心配して口を出すのを嫌がることもあるでしょう。直接的にあなたに相談がなくても、こちらが親をそれとなく見守ることは必要かと思います。

それからひとつ知っておいていただきたいことは、建て替えなくても古い住宅の再生は思いのほかできるということ。前回の記事でも説明したとおり、たとえ築60年の木造建築でも躯体さえしっかりしていれば、きちんとメンテナンスを施したりリフォームをすることで貸しも売りもできるのです。

ご存じのとおりリフォームとは、老朽化してマイナスの状態になっていた家屋を改修し、設備の更新などによって元の新築の状態に近づけること。一方、近年注目されている「リノベーション」は、家屋に新たな機能や価値を付けて元の状態にプラス要素を付け加えることと定義されます。古い家屋でも、現代の人々のライフスタイルに合わせた間取りや内装、最新の設備などに改修することで、価値を高めることができるのです。

ご相談者さんのケースでも、実家を壊さずにリフォームしたりリノベーションを施して人に貸すという選択が最善だったかもしれません。

借金をすることが相続税対策になると思っている方も多いようですが、借金はやはり借金。リスクの高いものです。簡単に儲かるといった甘い言葉に踊らされないよう、くれぐれもお気を付けください。

また上記のほかにも、都心部なら「シェアハウス」や「駐車場経営」、地方であればレアケースですが「太陽光発電」などの土地活用も考えられます。それらについては著書の中でも解説していますが、どれにもメリット、デメリットはありますので、よくよく家族で話し合い、慎重に対策を講じましょう。

(構成:山岸美夕紀)


 

高橋 正典 不動産コンサルタント

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たかはし まさのり

株式会社バイヤーズスタイル代表取締役。宅地建物取引士、ファイナンシャルプランナー、国土交通大臣登録証明事業不動産コンサルティング技能登録者。

1970年東京生まれ。従来の日本の不動産業界の慣習を変え、より顧客に寄り添う「エージェント(代理人)ビジネス」にシフトさせるべく、株式会社バイヤーズスタイルを設立。顧客の物件の資産価値向上のため、業界で初めてすべての取扱い物件に「住宅履歴書」を導入。一般的に売りづらいとされる築年数の古い中古住宅の売買に精通し、顧客から厚い信頼を得ている。

さらに、一つひとつの中古住宅(建物)を正しく評価し、流通させるため「売却の窓口R」を運営し、その加盟店は全国に広がっている。不動産流通の現場を最も知る不動産コンサルタントとして、各種メディア・媒体等においての寄稿やコラム等多数。一方で、一般社団法人相続支援士協会の理事を務めており、相続問題を始めとする家族の諸問題に造詣が深い。自身も30歳で二世帯住宅を建て、その後父親を看取った経験から、後悔のない親とのかかわり方を提唱している。著書に『実家の処分で困らないために今すぐ知っておきたいこと』(かんき出版)などがある。

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