北越紀州が大王製紙社長らに巨額賠償請求 資本関係めぐる対立からついに裁判ざたに

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大王製紙の紙おむつは国内外で需要が伸びている

「佐光社長との対話を求めていくが、期待はできない。それ(対話)がかなわないなら"法的な手段"を講じざるをえない」――。11月下旬に開かれた決算説明会の締めくくりに、製紙業界5位・北越紀州製紙の岸本セキ夫(セキの字は「折」の下に「日」)社長はこう予告した。

その言葉どおり北越紀州は12月15日に、業界4位・大王製紙の佐光正義社長ら同社取締役13人に対し、総額88億円の損害賠償請求訴訟を東京地裁へ提起したことを、翌16日に公表した。取締役1人当たり単純平均で6億7700万円もの巨額請求となる。

筆頭株主と持分法適用会社の争い

今回の訴訟提起の発端は、大王が9月1日に取締役会で発行を決議した「2020年満期ユーロ円建転換社債型新株予約権付社債」、いわゆるCB(転換社債)にある。同CBの転換価額は、発表直前の9月1日株価終値1429円に対し、14円を上乗せした1443円(アップ率0.98%)に設定。通常、CBの転換価額は直近の株価終値から20%程度高く決められることが多いが、今回のCBは転換価額が低めに設定されたため、株式への転換が早めに進む可能性があった。

また、発行金額も300億円と比較的大きい。将来、CBがすべて新株に転換された場合、大王の発行済み株式数(直近で1億4934万株)は2079万株増える。つまり、大王の1株当たりの純資産や純利益は最大で14%希薄化される可能性がある。

9月1日の発表を受けて、将来の希薄化リスクが株式市場で嫌われた結果、翌2日以降の大王株価は急落。9月前半の東京株式市場はTOPIXでみても比較的落ち着いていたにもかかわらず、大王の株価は終値ベースで、9月1日の1429円に対し、CB発行日(払込期日)前日の9月16日には1046円と27%も下落した。

実は北越紀州は、売上規模では大王の半分程度(2014年度実績で大王4502億円、北越紀州2284億円)ながら、大王の発行済み株式の21%を保有する筆頭株主。つまり、北越紀州にとって大王は広い意味でのグループ会社、「持分法適用会社(持分会社)」に該当する。

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