現役層の就労支援に加え貧困高齢者の増加を防げ

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だが、非正規雇用は増え続け、厚労省の直近の調査では、所得が標準的世帯の半分以下である「ワーキングプア」は640万人もいる。彼らの大半は現役世代で、年金保険料を払っていない人もかなりいるとされる。将来の無年金・低年金予備軍であり、資産形成も難しいため、いずれ生活保護になだれ込む可能性が高い。とすれば、早期に保険料を払ってもらえるよう促すための年金制度の改革は急務だ。また、給付付き税額控除など貧困から脱するための後押し策も整える必要がある。

生活保護は社会保障制度の最後の砦であり、安易に入口を絞り込めば餓死や孤立死といった悲劇を生む。生活保護のケースワーカーとして約30年の勤務経験がある池谷秀登・帝京平成大学教授は、「生活保護は他の社会保障で救えなかった人を最後に救う制度。生活保護費を減らすのであれば、他制度の支出を増やさないとならない」と強調する。

確実にいえるのは、生活困窮者を減らすには、経済成長による雇用の確保や就労支援策に加え、年金制度などを含めた社会保障制度全般の見直しが必要ということだ。生活困窮者が1人でも少ない社会を目指すべきことは、いうまでもない。

※写真:自治体による生活保護者向けの就労相談会、本文とは直接関係ありません。

(シニアライター:柿沼茂喜 撮影:風間仁一郎 =週刊東洋経済2012年8月11-18日合併特大号)

記事は週刊東洋経済執筆時の情報に基づいており、現在では異なる場合があります。
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