日本最大のITイベントで語られた、ITベンチャーのホンネ インフィニティ・ベンチャーズ・サミット

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それよりもスピードがものすごい大事で、とにかく速く出して、不完全でもいいから世の中に出して、ユーザーのフィードバックをもらって、バンバン修正していくっていう、そのスピードのほうがすごく大事。リーンスタートアップとか言いますけれど。

そういう意味で資金調達のやり方とか、ビジネスプランを考えても意味がないんですよね。はっきりいって。コストも人件費しかないんで、もうビジネスプランの意味ないということで、とにかくこいつらなら面白いことをやりそうだ。しかも、柔軟な考えを持っていて、いろんな人のアドバイスをユーザーからフィードバックもらって、自分たちの信じるものをキモとして、どんどんこう良いものに変えていこうっていう……。

でもその代わり、絶対にもう成功するまで、何としてもやり遂げるという根性があるかどうかっていうのと、あとは、やっぱり良いアイデアとか志とかビジョンとかがあっても、結局モノがしょぼいとどうにもならないんで。まあそのものにキラリと光るものがあるかどうか。この2つしか見てないですね。

500万っていうのは、その500万で事業がサービスインして完成するわけもなく。ですから実際投資なんですけど、いわゆるスカラシップという……なんか投資っていうのは、なんかおかしいねっていういうことで、奨学金というふうに最近呼んでます。とにかく奨学金出すから、ある程度形になるところまで行きなさいと。

私たちはむしろ次のステージである程度形になって、さあ、お客さんがつき始めるところまでいけば、評価できるもしくはその投資をしたいっていう、戦略的な事業投資家というのはいっぱいいらっしゃると思うんで。とにかく私たちがそこまで持っていってあげると。ですから、従来のベンチャーキャピタルとか、投資家的なスタンスとは違う投資の仕方を今してて。

もちろんそればっかりで進めるっていうのではなくて、そういうスタートアップに対するおカネの出し方っていうのを、今めっちゃ極めようとしてて。その代わり、まず次のステージではシリーズBとかCとか、レイターステージであれば従来のベンチャーキャピタルで活躍するべきものがあるので、まずそういうときにはたとえばわれわれが支援している1社、トリッピースという会社がありますけど、オプトさんがぜひやりたいということで投資をされて、今度次のステップに行ったんですよね。ここにいらっしゃる皆さんの会社も、興味があればぜひお伝えしたい。

だからそういう、企業の成長ステージごとに必要なプレーヤー、そんな人たちがみんな居てですね、まあ本当にこのIVSもすごいと思うんだけど、日本にもシリコンバレーのベンチャー生態系ができるのに、重要なパーツ全体が少しずつそろってくるとどんどんどんどんその流れが大きくなって、どっかしばらくすればモメンタムも生まれて、10年後か20年後にはシリコンバレーを抜けるような、シリコンバレーよりももっとすばらしい企業文化を持った、地域というのの中心に、東アジアをできたらいいなっていう、絶対あったほうがいいと思います。

藤田 ちなみに、良い起業家はいますか。 

孫 いますよ。あのね、実際、正直去年始めたときはあんまり期待してなかったんです。あんまり、実は。と思ったら意外と……もちろん、これで完成と今見ちゃいけないですね。だけどポテンシャルでいうと、少なくともわれわれが20代前半とかで、起業しようとしていたときよりも、明らかに今の人たちのほうがスキルも、絶対にレベルが上がっています。今のサッカー日本代表とかも一緒ですよね。

■シリコンバレー型か、日本型か

守安 すいません。ちょっと泰蔵さんに質問したいんですが。シリコンバレーに負けないこうまあ、そういうベンチャーをどんどん生まれたりだとか、シリコンバレーの会社よりもでっかくなるような会社を日本から目指すっていうのはすごい重要だと、僕もやりたいと思っていて、うちもシリコンバレーの会社を買収して、人材の質を比べると、質というか働き方を比べると、まず圧倒的に仕事する時間が日本のほうが長いです。優秀さも優秀の定義によるんですけども、負けてないんと思うんですね。

孫 負けてないですね。

守安 そうすると。なんで、こう日本の会社がね、自分の会社は勝てないかということで、1つが先ほどおっしゃった、彼らはもう英語圏にサービスするので、何か成功したものをスケールしやすいということで、いわゆる成功したときに、日本だと言語の壁もあって、そのアップサイドとか見えちゃうんで、PRとかも含めたそのポテンシャルというか、そういった立場も多分違うっていう、そういうダイナミズムがけっこう違うと思うんですけど。

もう1つが、人材の流動性というか、シリコンバレーはやっぱり、こう人材の流動性が高くてつながりやすいということ。一方、日本でいくと、法律の問題もあったりとか、カルチャーの問題もあって、1つの会社に長く勤めて、その代わりちゃんとこうその会社に対するロイヤルティが高いとか、その違いがあるんですけど、そこらへんはシリコンバレーふうにしていくんだとしたら日本もそういうこう、カルチャーというか、労働環境を変えていくべきなのか、それともそこは日本なりのやり方というか、それを守っていったほうがいいのかっていうと、そこら辺はどうですか?  

孫 えっとですね、シリコンバレーと同じであればそれでいいかというと、それはないなとは思います。というのも、シリコンバレーってご存じのとおり、世界中から集まって……アメリカ人のネイティブの人たちが、ずっといるわけではないじゃないですか、中国人も日本人もいっぱいいてっていう、そういう国際リーグなんですよね。

そうなるとやっぱり、何ていうかいろんな人が流動しますよね。でも、日本って、僕は海外に行って帰ってくるとすごく思うんですけど、あうんの呼吸とかハイコンテクストなところがすごいあって、逆にそれが非常に効率よく動いている場合もあると思うんですよね。

簡単に言うと、一言で言うと、僕はシリコンバレーを上回るベンチャー生態系、日本にいるとしたら、こうなったらいいっていうのが、何回もおそらく1個の大きなDeNAのような大きい会社の中でも、必死に自分でやっててもいいんですけど。

とにかくいっぱいチャレンジできる、失敗してもばんばんチャレンジできるっていう、よくシリコンバレーでは失敗は経験だっていわれるのがあって。失敗ばっかりしているところは評価されることもあるんですけれど、それのさらに上をいって、もっとこう……とにかく失敗をいっぱいしたほうがすごいっていう、ようなぐらい、ばんばんチャレンジする。それに対して、ものすごい寛容で、むしろどんどん応援してくれる、やんない人がいると、やんなよみたいな感じになるような社会になれると思うんですよね。

何でかっていうと、コンテクストをすごい共有している社会だから、まったく言葉が通じない、言葉は言語っていう意味じゃなくて、なんか通じない人たちの中だと不信感とか出たりするのが、やっぱりどういう人かって大体わかるので、お前が失敗したって俺はそれにかけるからっていって、いろんな社内外の人がいろいろサポートしてくれて、支え合って輪を持ってる、どんどんいろんなことにチャレンジしても応援するっていう文化を、若いわれわれが作れたら……ほんとに今これから出てくる若い人たちが、とにかく大振りするようになると思うんですよね。

最近僕ブログで書いたんですけど、空振りを、大空振り三振すると、わあ、恥ずかしいとかね、もうアウトになると「えー」みたいな野球しかできなかった頃ですよね。

でも、何回失敗、三振してもいいし、何回アウトになってもいいけど、結局歴史に残るのは、何本ホームラン打ったかっていうと、どんなどでかいホームランを打ったかしか残らないです。どんな失敗しようが、打率が0.1割だろうが、そこはまったく歴史に残らんから、ともかくやってみ、っていうふうにもしなってたら、みんなメッチャ大振りすると思うんですよ。

そういうね、みんなメッチャ大振りするような、それをすごい「お前すげー大振りしたね、すげーわ」って言われるような、カルチャーっていうのになれたら、絶対シリコンバレーよりすごいと思うんですよね。

守安 シリコンバレーっていわゆるもう町というか、あの地域全体がコミュニティで、そこで人が流動しながら新しいのができていくっていうのが特性だと思っていて。で、藤田さんにお聞きしたいんですけど、サイバーエージェントがサイバーエージェントっていうグループの中で、それこそ今、100個新規事業やってますけども、あれは、サイバーエージェントの中でこう新しい事業をどんどんと起こして、ミニシリコンバレー的なものをサイバージェントの中に作ろうとしているのかな、みたいな、外から見ているとなるんですけども、そのあたりはそういう考えなのか、そういう別の考えなのか、どういう……。

藤田 じゃあ司会ですけれど、失礼します。

まあ正直、今までも、新しい事業をたくさんやって、その中から成功するのが出てきたので、ネット業界に長く生き延びているという感覚が自分の中ではあって。もう意図的にそういうベンチャー風土ってのを絶やしてはいけないと思ってこうやっているんですけど。

悩ましいところもあって、たとえば、われわれのSAP(=ソーシャル・アプリケーション・プロバイダ。ソーシャルゲームプラットフォームへのタイトル提供会社)事業とかそうなんですけど、カードバトルが飛び抜けて収益が上げ始めると、そっちにどんどん経営リソースを回さなければいけないので、新しい試みが非常に難しくなっているという、そのジレンマみたいな感じなんですけど。

その点DeNAさんは、かつてはもちろんビッダーズというオークションから始まって、さまざまないろんな事業をやられて、モバイルのアドネットワークもやられてましたし、シニア向けのサイトとかをやってらっしゃったり。そこで今に至っていると思うんですけど。今ものすごく高収益の事業ができて、そういう新しい取り組みへの社内の扱い方みたいなのは、どう仕掛けられてるんですか。

守安 われわれはその、「世界を切り拓く永久ベンチャー」って言っているので、やっぱり新しいものはどんどん生み出したくて。ただやっぱり、一定の打率、3割ぐらいいかないと、10回に1回じゃなくて、3回に1本ぐらいはそれなりのヒットを打てるような、そういう立ち上げ方にしたいなというのがまず1つあります。もう1つ……。

孫 大振りじゃだめなんですか? 

守安 いやあの、最初から大振りするようだと打席にも立てないので、コンパクトに打ちながら、球が来たときにグッと押し出すような、そういう打ち方でいきたいと思ってるんですけど。

一方で今、やっぱりソーシャルゲームというのは世界に勝てる、日本から出ている唯一の産業かもしれないというふうに思っていて、そこにこう当然経営リソースをガーンと張ってこう、今張っているんですけど。ソーシャルゲームに集中することと、社内のそういうベンチャー魂をどうやっていくかみたいなところっていうのはすごい悩む。

藤田 悩んでらっしゃるんですね。

守安 はい。

 

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