鴻海の出資条件変更で38年ぶり安値更新のシャープ--「9.9%か、669億円か」2つのシナリオ

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もう1つは、出資比率9.9%を据え置き、1株あたりの取得価格を引き下げるという考え方だ。このケースでは当初予定していたように鴻海グループ企業が筆頭株主となることはない(鴻海グループ4社で9.9%の出資となるため、筆頭株主は「日本生命保険」のまま)。ただし、調達資金も3分の1程度になるため、喫緊にほかの資金調達方法を模索する必要がある。

シャープ関係者は、上記の2シナリオについて、「後者(=出資比率を据え置く)が選択される可能性が高い」と話す。そもそも3月に契約を結んだ時点で、町田勝彦相談役は郭台銘董事長に対し、4社に分割しての出資を要求していた。それはシャープが日本企業としてやっていくうえで、顧客や取引先、さらには”鴻海傘下”リスクを嫌うメインバンクの心証を慮ってのことだった。

鴻海がシャープ本体への出資をとりやめる、という事態は考えにくい。前出の関係者によれば、「シャープ本体への巨額出資」は「堺工場の共同運営と、鴻海への液晶パネル技術の供与」の条件だからである。すでに郭董事長は7月、自身の投資会社を通じて、堺ディスプレイプロダクトへ約660億円を払い込み、堺工場の共同運営はスタートしている。また鴻海は、13年に成都で稼働させる液晶パネル工場へも、シャープ社員を派遣し、生産技術を供与してくれるよう要求している。成都工場は、これまで“組み立て屋”であった鴻海にとって初となる本格的な液晶パネル工場であり、郭董事長の期待は大きい。鴻海がシャープからとれる“果実”が残っている以上、ここでシャープを“切り捨てる”ことはありえないだろう。

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