最愛のペット、離婚時に「親権」はどう決まる 法律上は、人と同じようには扱えないが…

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ただ、少なくとも法律上は、ペットを人と同じように扱うことはできません。民法でのペットの分類は「モノ」、正確に言うと「動産」です。離婚時にどちらが ペットを引き取るか決める際は、基本的には家財道具などと同じ「所有権が誰にあるのか?」という観点から考えることになります。

ご相談のように、結婚後に飼い始めたペットは「購入した」、「無償で譲り受けた」、「拾った」など、どのような経緯でも、夫婦が協力して得た財産、つまり「共有財産」であり、財産分与の対象です。

話し合いで決着がつかない場合は、その他の財産とあわせて、裁判所が判断することになるでしょう。動物は、モノとは違って「命あるもの」(動物愛護管理法)であることから、子どもの親権を決めるときの考え方を応用できると考えられます。

たとえば、普段の餌や水、糞尿の処理、散歩などの世話をしていたのはどちらか、別れた後の居住環境が整っているか(特にペット可の物件か)、十分な収入があるかといった事情が重要なポイントです。

ペットの立場にたって、冷静な判断を

ちなみに、夫婦の一方が結婚前から飼っていたペットは、連れてきた側の特有財産で、個人のものとなります。もう一方が、主に世話をしてかわいがり、ペットがなついている場合でも、結論は変わらず、離婚時は所有者としてペットを引き取ることが可能です。

離婚に至った夫婦の多くは、相手方に対する信頼が大きく損なわれていますので、お互いが「大切なペットを渡すことは絶対にできない」という思いを抱くのは無理もないことです。

しかし、子どもの親権者争いと同様に、「ペットの立場にたって」、ペットにとって幸せな環境を冷静に考えていく必要があるでしょう。

誰しも、一歩引いて冷静に見つめることはなかなか難しいものです。一人で考え込まず、弁護士に相談していただければと思います。

細川 敦史(ほそかわ あつし)弁護士
2001年弁護士登録。交通事故、相続、労働、不動産関連など民事事件全般を取り扱いながら、ペットに関する事件や動物虐待事件を手がける。動物愛護管理法に関する講演やセミナー講師も多数。ペット法学会会員。
事務所名:春名・田中法律事務所

 

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