なぜ人は「ムダな保険」に入ってしまうのか 行動経済学でわかる保険に入りたい理由

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あなたは、「ムダな保険」に入っていませんか?(写真 : Sergiy / PIXTA)
知らないと損する、経済とおかねの話。大手証券会社で、長年、個人の資産運用相談を担当し、接したお客様は3万人以上。さらに「経済や投資の基本テキスト」などのコンテンツを制作し、40万人以上に「経済とおかね」に関する授業を開催してきた大江英樹氏。
新入社員から、ファイナンシャルプランナーといったおかねの専門家に至るまで「これ以上ないくらい、わかりやすい」と評判の内容が、このたび『知らないと損する 経済とおかねの超基本1年生』として書籍化されました。
本連載では、書籍では紹介しきれなかった、人生のここ一番の選択から、日々の買い物まで、あなたが人生で損をしないために知っておくべき「経済とおかね」の超基本の一部をお伝えします。

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「高まるリスクに保険で備える」は、どこかおかしい

わかりやすいにもホドがある! あなたが人生で損をしないための「経済とおかね」の話。書影をクリックするとAmazonのサイトにジャンプします

テレビや雑誌などで医療保険の広告を見ていると「高まるリスクに保険で備えましょう」といった文言がよく出てきます。一見すると当たり前のように思えるこの言葉、実はよく考えると、とんでもない論理矛盾が隠されています。

そもそも保険というのは、何のためにあるのか、ということを考えてみます。それは滅多に起こらないけど、もし起こったら自分の蓄えではとてもまかなえないことに対処するためです。重要なキーワードは、“滅多に起こらない”ということです。滅多に起こらないことだからこそ、安い保険料で万が一の時の保障が手厚くもらえるのです。

頻繁に起こることであれば、保険料というのは高くなってしまいます。これは生命保険に加入する時点での年齢に応じて保険料が高くなることからも、おわかりだと思います。つまりリスクが高まることに対して、本来、保険はあまり向いていないのです。

これは損害保険を例にとるとわかりやすくなります。自動車保険に加入する場合、対人の場合は金額が無制限ですが、それほど保険料が高いわけではありません。

一方、車両保険の場合はかなり保険料が高くなります。これは当然です。人身事故というのは滅多に起きることではありませんが、車庫入れや狭い道でこすったりすることは、割とよくあるからです。したがって、中には車両保険自体には入っていない人もいますし、入っていても免責額を高くすることで保険料を安くする、すなわち少々こすったぐらいであれば自分のおかねで修繕できるので、高い保険料を払うのはもったいないと考える人がいても当然のはずです。

ですから、高まるリスクに保険で備えましょうというのは、自動車保険で言えば「車庫入れでこすったりすることはよくあることだから、高い保険料を負担しても保険には入っておきましょう」と言うのと同じことなのです。

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