「共創」が未来を作る シャープ元副社長・佐々木正氏④

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ささき・ただし 1915年生まれ。京都大学工学部卒。神戸工業(現・富士通)取締役を経て、シャープ副社長、顧問。電卓の生みの親。シャープを日本有数の家電メーカーに育て、日本の半導体産業の礎を築いた。現在はNPO法人・新共創産業技術支援機構の理事長を務める。

大事なのが、共創という考え方

今回の台湾・鴻海(ホンハイ)精密工業のシャープ堺工場出資については、正直、警戒しています。

シャープは、「おカネが入ってくるから、危機を乗り越えた」と一安心してはいけません。これは勝負ですよ。郭台銘・鴻海会長に対しても、「いやぁ、ありがとうございます」なんて調子のいいことばかり言っとってはダメだ。彼が堺工場に入るすきがないぐらい、根性のある経営をしてもらわないとね。

過去のサムスンとの技術提携と異なり、シャープが欲しかったのはおカネだけ。鴻海はシャープの技術だけが欲しい。互いに信頼しているわけではないように見えます。

シャープの経営陣は、あんな大きな赤字が出るなんて初めての経験だから仰天したんだろうね。今は、短期的な業績が、経営陣の評価基準になる時代です。それでも経営者たる者、長期的な経営戦略を、自信を持って説明できるようでなくてはね。

幼少時、台湾で育った私は、郭台銘の父親をよう知っているんですよ。小学校の同級生です。当時、台湾で散発していた日本人を狙ったテロについても予言したりして、非常に頭の切れる子どもだった。幼い頃の郭台銘少年も聡明そうでしたよ。ですから、今回の出資には因縁を感じます。

厳しいといわれる日本の電機業界ですが、天動説じゃなしに、地動説で考えなあかん。

電機業界とは、社会が生んだものです。社会が変わってきたら、業界は変わるかも、なくなるかもわからんね。ネットワークが発達した現代社会では、たとえばアラブの春といった動きが、同時に日本にも影響する。文明・文化の津波がやってくる。私は、近々“乱”のような大きな変化があると見ています。

そんなとき、自分の業界だけは変わらないという自分中心の考え方が天動説です。「電機業界のままでどうにかしたい」という発想になる。これはダメです。地動説に基づけば、社会の変化に応じて商売も変えていくことが必要です。もっと広く考えないといけない。シャープも「ヘルシオ」や「プラズマクラスター」といった健康分野に力を入れだしたのはいいことです。

電機、自動車、建築……さらに新しい学問がミックスされた業界になるかもしれん。そういうときに大事なのが、共創という考え方でしょう。独創的な人間が協力し合えば、創造性は何倍にも膨らみます。共創は独創より、もっと高次元のものなのです。

週刊東洋経済編集部
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