イオンに不当廉売、窮地に立つビール卸

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これにより「一時はビールの値段が上昇した」(大手スーパー)という。が、イオンは「酒税法改正や原材料高騰による値上げならば応じるが、リベート廃止を理由とした値上げは消費者に説明がつかない」として値上げを拒否。代わりにメーカーの工場からイオンのトラックで商品を運び入れる仕組みを整え、卸側のコスト負担を軽減したとする。それでも、イオンに対しては本来卸すべき価格を下回る水準で卸す状態が続いていたとみられる。

営業赤字が常態化

そもそもオープン価格制は、メーカー、卸、小売りがそれぞれ原価や仕入れ値に、供給上必要な販管費と適正な利潤を加えて取引先に販売できることを目的の一つとして導入された。ところが、ビール類の需要低迷やデフレ、海外競合品の台頭などで小売り間の安売り競争が加速。末端価格の低迷は当然、メーカーや卸の販売価格にも影響を及ぼしている。

とりわけ卸はイオンのような強力な販売網を持つ小売りとの取引を維持するためにも、卸価格を柔軟に見直さざるをえないのが現実だ。イオンの例に限らず、小売りに対して採算の合う価格で卸せるような力関係にはないのである。

実際、国税庁の「酒類卸売業者の概況」によると、酒類卸の10年度の売上高総利益率が平均5・2%なのに対して、同年の販管費は平均7・9%と、赤字取引が横行している。

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