【産業天気図・住宅/マンション】価格高騰による購買意欲低下、改正建築基準法の影響で転機迎えたマンション販売

マンション業界は、2007年度後半、08年度とも「曇り」の見通しだ。
 「マンションブームの終焉」といった声も聞かれる最近のマンション業界。変調の兆しは2つ。1つは、価格高騰から購買層の購入意欲が低下してきたことだ。不動産経済研究所によると、首都圏マンションの平均価格は、2005年の4108万円から06年4200万円、07年1~10月で4674万円まで上昇している。この価格は92年以降では最高水準だ。価格高騰の背景は、用地代や建築費の上昇に加え、販売サイドによる強気の価格政策があった。
 例えば、用地代の上昇を織り込んで「新価格」と呼んだり、さらに建築費の上昇を織り込んで「新々価格」と言ったりしたりが、市場からはほとんど「ノー」に近い反応を突きつけられている。契約率は07年8月以降、好不調の分かれ目と言われる70%を割り込み、以降9月、10月と3カ月連続で60%台が続き、11月も70%割れは確実な状態だ。販売動向を地域別で見ると、郊外や神奈川・千葉・埼玉といった東京周辺地域では、駅前ならともかく、それ以外のバス便使用地域は売れ行きが落ちている。また、これまで比較的順調だった都心の高額マンションも、サブプライム(米国の信用力の低い個人向け融資の焦げ付きに端を発する信用収縮)問題や軟調な株価を反映して動きが鈍くなってきたとの声も聞かれる。
 業界関係者は、「今のマンション業界は、どこの地域が不調といった面では答えられない。むしろ、点で好不調が分かれている。それだけお客の購買姿勢が厳しくなっている証拠だ」と言う。
 変調の2つ目は、耐震偽装事件に端を発した改正建築基準法の影響だ。国土交通省の新設住宅建設戸数は、7月から10月まで4カ月連続で前年同月を下回った。6月20日の同改正法の施行以降、構造審査の厳格化(ピア・チェック)により、審査スピードが大幅に低下。業界関係者は「審査期間は従前の21日から70日に延びると言われていたが、それ以上に日数がかかっている」と言う。
 企業業績面では既に大幅な減額を発表するところも出てきた。例えば、賃貸アパート建設の東建コーポレーション<1766>がそれだ。同社は12月初旬、物件の期ずれにより、今08年4月期利益見通しを当初計画の約半分に減額している。今後、確認審査の遅れいかんでは、業績を減額する企業も出てきそうだ。
 ただ、来08年度を見通した場合、改正建築基準法の影響については、新しい審査方法に対する慣れから、徐々に確認審査の渋滞が緩和されると見られる。これに対して、1つ目の購買意欲の低下の影響は少し長引きそうだ。理由はマンション価格の上昇に対して、個人所得が追いついていないことや、住宅ローン金利、消費税などの引き上げ時期が不透明で、住宅を買い急ぐ要因にも欠けることなどが挙げられる。このため、マンション販売業界では、建築確認を取得後に販売を開始するいわゆる”青田売り”は影を潜め、竣工後までも視野に入れた粘り強い販売方法や価格修正も行うといったに姿勢に転換する企業が増えそうだ。
 ただ、企業業績面では、大手不動産とマンション専業の間で業績格差が出てきそうだ。例えば、マンション専業では、藤和不動産<8834>が既に今08年3月期は減益を予想しているが、購買意欲の低下や改正建築基準法の影響による竣工の期ずれで、大京<8840>、コスモスイニシア<8844>、日本綜合地所<8878>、セントラル総合開発(3238>なども、来09年3月期に入って業績が低下する可能性がある。一方、三井不動産<8801>、三菱地所<8802>、住友不動産<8830>、東急不動産<8815>、野村不動産ホールディングス<3231>などの大手不動産会社や準大手の東京建物<8804>などは、マンション販売以上にビル賃貸業や証券化による資産運用収益の比率が高いため、マンション販売の低下があっても補える見込みだ。
【日暮 良一記者】

(株)東洋経済新報社 四季報オンライン編集部

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