ANAが仕掛けた国際運賃の慣例崩し

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ANAが仕掛けた国際運賃の慣例崩し

JALが今月実施した燃油特別付加運賃の大幅値上げに対し、ANAは据え置き。値上げの共同歩調をあえて崩したANAの狙い。
(『週刊東洋経済』1月19日号より)

 今年1月からの国際航空運賃の動向に今までにない「変化」が起きている。

 欧米線で往復8000円増の3万4000円、東南アジア線が往復5200円増の2万5000円……。日本航空(JAL)は、燃料価格の上昇分を航空運賃に上乗せする燃油特別付加運賃(燃油サーチャージ)を大幅に引き上げた(1~3月分)。改定はこの半年で3度目だ。

国際線拡大をにらみ あえて崩した共同歩調

 燃油サーチャージとは、航空会社の自助努力で吸収できない燃油費の一部を機動的に運賃へ転嫁する仕組み。近年の急激な原油価格高騰を受けて「緊急避難的に認めた」(折原英人・国土交通省航空事業課課長補佐)という経緯がある。

 だが今回、全日本空輸(ANA)は付加運賃の引き上げを見送った。

 これまでANAとJALは燃油サーチャージの引き上げで、時期、価格とも完全に歩調を合わせてきた(33ページ表参照)。両社の対応が分かれたのは今回が初めて。海外航空会社も軒並み値上げを実施しており、ANAの“価格据え置き”は異例だ。「ANAはパンドラの箱を開けてしまった」と業界関係者は驚きを隠さない。

 国際線の航空運賃はすべて国交省の認可が必要で、燃油サーチャージは2005年2月から導入された。認可以後、航空燃料の代表的な指標であるシンガポールケロシン市況は、落ち着くどころか07年に過去最高の1バレル=116ドルを記録。5年前の水準から4倍近くになった。ANAとJALは恒常的に燃油サーチャージの改定を繰り返し、「第2の運賃」とも揶揄される水準に達している。

 そもそも航空燃料は各社が独自に先物取引などを活用して調達するため、改定額が同額で推移すること自体が不可解だった。それがまかり通ってきたのにはカラクリがある。本来なら改定幅は各社で算定すべきものだが、水面下では国交省が一定水準の料金指標を作成。「これまでANAもJALもそのレールに沿って認可されるぎりぎりの高い運賃を申請している」(関係者)からだという。

 だが、ANAは今回、「護送船団方式」を自ら壊した。そこにはJAL主導の国際線に対する反発と積年の思いが込められている。

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