女性活用、3つの「失敗パターン」への処方箋 大手の真似をしても成功するとは限らない

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当たり前のことですが、機会を与えられないことには、男性だって女性だって、成長することはできないのです。このような企業が打つべき施策は山ほどありますので、順を追って説明していきます。

まず何よりも「管理する側」の意識改革を行っていくことから逃げてはいけません。女性を育成する立場にある中間管理職向けには、女性活躍推進の必要性を伝える研修や講演を行いましょう。

その際に最も重視すべきメッセージは、女性活躍推進が男性にとっても、会社にとっても、非常に大きいメリットを生むということ。これまでの記事で紹介してきたようなデータや理論も交え、会社の本気度をしっかり伝える。具体的な育成方法のトレーニングも必要ですね。

先進企業の真似だけではうまくいかない

もうひとつ重要なのは、女性の教育に投資を惜しまないことです。論理的思考、法務、会計、マーケティングなどのビジネススキル、そして部下育成、コーチングなどのヒューマンスキルまで、幅広い研修の機会を、社内外のリソースを使って受けられるようにしましょう。

幹部登用を前提として、女性社員を男性幹部の補佐役(アシスタントではなく、参謀的な意味合い)に抜擢するのも効果的です。会社の意思決定のプロセスや全社の業務を大局的に捉えるスキルを身につけることができますし、優秀な女性には、だんだんと責任感ややる気が芽生えるはずです。

女性管理職比率の引き上げは、非常に難易度の高いテーマ。しかも企業ごとに女性活用へのスタンスや取り組みのフェーズがまったく異なるため、思いつきのアイデアを試したり、先進企業の取り組みを真似したりする程度では、なかなか思い通りの結果が得られません。

まずは今回取り上げた3つのパターンをご参考に、自社の現状と課題を的確に把握してください。そのうえで、課題にあった適切な施策を行っていくことが重要なのです。

清水 レナ 女性活躍推進コンサルタント

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しみず れな / Rena Shimizu

女性活躍推進コンサルタント。株式会社CHANCE for ONE代表取締役社長。

1973年生まれ。立命館大学在学中に「女子就職問題研究プロジェクト(現・キャリアデザインプロジェクト)」の立ち上げメンバーとして、企業人事部や働く女性たちへのインタビュー調査、女子大生の意識調査などを行う。また、女子大生代表として京都市男女共同参画会議に参加し、4年時には女子大生の就職奮戦記を共著にて出版。「就職氷河期を乗り越える女子大生」として数多くのメディアに取り上げられる。会社員になった後も、女性のキャリア支援や講演活動などをライフワークとして20年以上継続、延べ数万人に対して実施してきた。2010年に独立しコンサルティング事務所設立。大学非常勤講師としての活動も開始。2012年には「自律した女性が活躍できる社会を創る」を理念とした株式会社CHANCE for ONEを設立。

現在は法人向けに、女性活躍の調査、分析、施策立案などのコンサルティング、経営へのアドバイス、女性管理職トレーニング、中間管理職向け部下育成研修、女性活躍に関する講演など、女性活躍推進に関するサービスをワンストップで提供している。主な取引先は、大手メーカー、大手建設会社、大手小売業などの上場企業や大学法人など。立命館大学や共立女子大学などでは講師を務めている。著書に『輝く会社のための女性活躍推進ハンドブック』(ディスカヴァー)がある。

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