民主党の失敗を映し出したマニフェストの「力」

民主党の失敗を映し出したマニフェストの「力」

塩田潮

 マニフェストの評判が悪い。

 民主党政権の約3年で、マニフェスト破綻が次々と明らかになったからだ。消費税増税法案の3党合意をめぐる与野党折衝で、民主党が2009年にマニフェストで掲げた最低保障年金制度や後期高齢者医療制度の廃止は棚上げとなり、野田首相は「マニフェスト破り」と攻撃を受けて、責任回避の辻褄合わせに四苦八苦である。

 09年の民主党のマニフェストには消費税増税は1行もない。総予算の全面組み替えと無駄排除などによる新財源捻出が柱だった。

 一方、自民党は10年の参院選で「消費税10%」を唱えた。24日の取材で、野田毅・自民党税調会長は「3党合意でマニフェストを実現しようとするのが自民党で、民主党はマニフェスト違反」と話していたが、増税実現となれば、野党がマニフェスト達成、与党がマニフェスト破りという珍妙な結果が生じる。

 民主党のマニフェストについては、選挙目当てにできない約束を掲げたのが悪かったのか、約束を実行できないのが悪いのか、という「鶏と卵」のような議論がある。一方で、政権獲得後の新事実判明や情勢変化もあり得るのだから、数値目標や達成期限付きのマニフェストをつくるのが間違いで、大きな方針やプランの概要、つまり大雑把な努力目標を掲げれば十分という主張も強い。それどころか、マニフェスト不要論を説く人もいる。

 だが、むしろこの3年でマニフェストの有効性と必要性が明確になったと見ることができる。できない約束をするのも約束を破るのも、選挙での「国民との約束」が前提だ。マニフェストという道具のお陰で、実現の可否を精査せずに甘い約束を掲げた民主党と、掲げた方針やプランの実現への熱意と能力に欠ける民主党政権という実態が明白になった。

   マニフェストは政党の裸の姿を映し出す鏡だ。逆説的だが、「民主党の失敗」が、見事なほどマニフェストの役割と効用を人々に認識させた。向こう1年の間に訪れる次の衆参の選挙でも、各党に数値目標と達成期限付きの具体的なマニフェストを出させて、政党の素顔と生の実力を見極める鏡として活用すべきである。
(写真:尾形文繁)
塩田潮(しおた・うしお)
ノンフィクション作家・評論家。
1946(昭和21)年、高知県生まれ。慶応義塾大学法学部政治学科を卒業。
処女作『霞が関が震えた日』で第5回講談社ノンフィクション賞を受賞。著書は他に『大いなる影法師-代議士秘書の野望と挫折』『「昭和の教祖」安岡正篤の真実』『日本国憲法をつくった男-宰相幣原喜重郎』『「昭和の怪物」岸信介の真実』『金融崩壊-昭和経済恐慌からのメッセージ』『郵政最終戦争』『田中角栄失脚』『出処進退の研究-政治家の本質は退き際に表れる』『安倍晋三の力量』『昭和30年代-「奇跡」と呼ばれた時代の開拓者たち』『危機の政権』など多数
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