ブリヂストン、「買収合戦」は一件落着なのか ペップボーイズを巡り、大物投資家とバトル

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そのほかにも、アイカーン氏は保険大手のAIG社に対し、企業を3つに分割するように要求。大量保有するアップル社には自己株買いを要求した。株式時価総額が世界一のアップルだが、同氏の「大幅に過小評価されている」という発言で、実際に株価が上昇するなど、相場にもたらす影響力は大きい。投資先だったネットフリックスの高騰でも、投資手腕は再評価された。これだけ手強い相手なだけに、ブリヂストンにとって高い買い物になるのかどうかが注目されているのだ。

もっとも、アイカーン氏が主張するオートプラスとのシナジーについては疑問視する声も多い。市場関係者からは「そうした狙いならば、もっと安い時点で買っているはず」と、買収を好機ととらえたサヤ狙いとの見方もある。

ブリヂストンにとって米国は最重要市場だ。「ファイアストン コンプリート オートケア」などのブランドで全米に2200店舗以上を展開し、タイヤ、自動車用品の販売、修理、補修を手掛ける。2015年1~9月期(第3四半期)の同社の営業利益は3786億円だが、うち米州では1708億円を稼ぎ、国内の1386億円を上回る。

このまま決着となるのだろうか

米国でも、ブリヂストンはシェアトップだ。ペップボーイズの800店舗を加えれば3000店体制となり、首位固めができる。また、米国は州ごとに規制が異なることもあり、出店が容易に進まないという事情がある。まとまった店舗網を手に入れることは大きなプラス効果になる。

ペップボーイズの営業利益率は1%程度と低い。のれん代償却を考慮すれば、利益貢献は当面先になる。ただ、短期的なマイナス要因があったとしても、米国で拡大するためには、このチャンスを逃したくないという思いは強かったはずだ。

結局、ブリヂストンは買収金額を上乗せし、12日にアイカーン氏と同額の1株15・5ドル、総額約8.63億ドル(約1046億円)で再度買収合意を結んだ。来年1月4日までにTOBで過半数の株を集めて支配権を握り、上場廃止に持ち込んだ上で、最終的に100%子会社化を目指す構えだ。

しかし、アイカーン氏の出方次第では、さらなる買収合戦でコストが膨らむ可能性はある。再び合意にこぎつけたとはいえ、まだまだ予断を許さない状況が続きそうだ。

山内 哲夫 東洋経済 記者

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やまうち てつお / Tetsuo Yamauchi

SI、クラウドサービスなどの業界を担当。

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