意外と知らない、イスラム教の「カネ問題」 日本人が見落としがちな「2つの視点」

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昔から、イスラム教徒が異教徒と戦う目的は税金徴収、つまり、カネでした。異教徒がカネを払って降参すれば、それで戦いは終わりなのです。

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『コーラン』には、異教徒を改宗させねばならないとか、抹殺しなければならない、といった記述はありません。イスラム教徒は、イスラムの教えを異教徒に押し付けることは、歴史上、ほとんどありませんでした。

また、このような他宗教への寛容を、カネと引き換えに認める規定を持つ宗教はイスラム教だけです。イスラム教はもともと、金銭的な実利を優先させようとする合理的な思想を持っていました。異教徒へのイスラムの戦いは「ジハード(聖戦)」と呼ばれます。

「聖戦」というと、妥協のない異教徒殲滅を想起させますが、そうではありません。「ジハード(聖戦)」は異教徒から税を徴収するためのカネ集めの手段でした。宗教やそれを信奉する信徒たちが繁栄するためには、カネが必要です。十分な富を信徒たちに分配できてこそ、宗教は求心力を高め、発展していきます。

汚らわしい欲望を神様に隠してもらうための戦い

一方、イスラム教とキリスト教は長く対立をしてきた歴史があります。11世紀より始まった「十字軍」で、両者の対立は本格化します。パリをテロ襲撃した直後、「イスラム国(IS)」は犯行声明で、「十字軍フランスに報復した」と述べています。中世の時代からの戦争が今でも続いているかのようです。しかし、この戦争も、よく中身を見てみると、その対立が宗教に起因するものではないことに気付きます。

「十字軍」は、地中海地域が経済成長する中で、領土拡張と商業利権を狙ったヨーロッパとイスラムの諸侯たちによって行われました。

当初、寛容であったイスラム教も、その勢力の拡大とともに、領土膨張への野心が強まります。そこで、征服のための大義名分がイスラム教に求められます。イスラムの征服者たちは原理主義を気取りながら、「ジハード(聖戦)」を自分たちの都合のよいように拡大解釈し、軍事膨張の口実としたのです。

ただし、拡大解釈された「ジハード(聖戦)」も、宗教的信仰とは別に、その最終的な目的は利権獲得、つまりカネなのです。その欲望に満ちた確執の汚らわしさを隠蔽するために「神の栄光」や「聖戦」がデッチあげられ、歴史上数々の戦いが繰り広げられてきたのです。

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