モランボン楽団、北京公演ドタキャンのワケ 金正恩第1書記の訪中も遠のく

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11日に北京に到着しバスで移動するモランボン楽団のメンバー(写真:REUTERS/China Daily)

2016年中に、金第1書記の初外遊となる中国訪問が決定している。今回、その露払いとして、金第1書記肝いりのモランボン楽団を送り込んだと考えられていた。

北京公演の代表団の団長には、労働党の崔輝(チェ・フィ)宣伝扇動部第1副部長が選ばれている。また9日に出発する際の平壌駅には金己南(キム・ギナム)宣伝担当書記やリ・チャングン同党国際部副部長、外務省で中国担当の李吉聖(リ・ギルソン)外務次官など、錚々たるメンバーが姿を現した。これは、北朝鮮側が今回の公演に並々ならぬ力を入れていた証左だ。

訪中“確実”から不透明に

歴史を振り返ってみても、今回のような芸術公演が中朝関係に重要な役割を果たしたことがある。1960年代、中ソ紛争のあおりで北朝鮮と中国の関係が悪化した際、北朝鮮の革命歌劇「花売る乙女」が中国国内で公演されたことがある。この歌劇のヒロインが中国国内で評判となり、これが中朝関係改善の一躍を担ったと評価されている。

金第1書記の露払いとされた今回の公演がドタキャンになったことで、訪中の可能性は一気に低下したことになる。金正恩政権が発足して丸4年。本格的な外交デビューはまだまだ先になりそうだ。

福田 恵介 東洋経済 解説部コラムニスト

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ふくだ けいすけ / Keisuke Fukuda

1968年長崎県生まれ。神戸市外国語大学外国語学部ロシア学科卒。毎日新聞記者を経て、1992年東洋経済新報社入社。1999年から1年間、韓国・延世大学留学。著書に『図解 金正日と北朝鮮問題』(東洋経済新報社)、訳書に『朝鮮半島のいちばん長い日』『サムスン電子』『サムスンCEO』『李健煕(イ・ゴンヒ)―サムスンの孤独な帝王』『アン・チョルス 経営の原則』(すべて、東洋経済新報社)など。

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