日本銀行が追加緩和を見送り 緩和の遂行にあの手、この手……

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日本銀行は12日の金融政策決定会合で現状維持の方針を全員一致で決定。景気の判断も前回会合と同様に「緩やかに持ち直しつつある」とし、4月に「経済・物価情勢の展望」で示した成長率や物価見通しに対する中間評価も大きな変更はなかった。

ただ、金融緩和の柱である資産買入等基金(以下、基金)の内訳の変更を決定した。目標を減額するのは固定金利オペの資金供給で、従来の30兆円から25兆円に引き下げる。同オペでは金融機関からの申込が日銀の予定した資金供給量に達しない「札割れ」が頻発していた。

 しかし、減額だけ行うと基金全体で70兆円という買入目標(2013年6月末までに達成予定)を下方修正することになる。足元で基金の買入実績は約54兆円(12年6月末)で、今後も国債を中心に残り11カ月強で約16兆円の積み上げを行う。「強力な金融緩和」として買い入れを進める日銀としては、目標の下方修正はあり得ない選択肢だ。

 そこで、短期国債の買い入れを5兆円増やすことで70兆円の目標を保持した。また、短期国債の買い入れで札割れが発生しないよう、従来の0.1%という入札の下限金利を撤廃。日銀がより低い金利で買い取ることは、金融機関側からすればより高い価格で短期国債を売れる仕組みになったと言い換えられる。

 

 

日銀は今年4月の会合で、より長めの金利の低下を図るため、「1年以上2年以下」という従来の長期国債の買入対象の年限を「1年以上3年以下」に延ばす決定をしたばかり。今回、短期国債の買入を増やすことによる金利面の効果は見出しにくい。むしろ、70兆円目標を維持するため、買入枠を増やした意味合いが強いとみられる。

札割れを受けた固定金利オペの減額は4月に続いて2回目となり、合計10兆円。白川方明総裁は会見で「(札割れは)金融緩和として、効果が発揮されている証左」と強調した。白川総裁が改めて説明したように、金融緩和の波及経路は第一段階の金融環境の改善、第二段階の緩和的な環境を受けて企業が投資を増やす、という2つに分かれる。

 

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