ロードスターがS660との接戦に勝ったワケ 日本カー・オブ・ザ・イヤーを10倍楽しむ方法

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もちろん、選考委員が60人もいれば、それぞれに評価の軸も異なるのは当然だ。クルマは走って楽しい方がいいという人もいれば、実用性が最重要という人もいれば、EVやPHVのようなサステナビリティを高く評価する人もいる。裏を返せば、60人というジャーナリストや有識者たちがそれぞれの評価軸を持っていて、そうした色々な人の視点を点数に落とし込んだ結果、高得点を得たモデルが受賞する仕組みになっている。

COTYを、さらに10倍楽しむ方法

さて、ここからは本賞の受賞だけではなく、COTYをさらに楽しむための見方をご紹介しよう。意外に頑張ったという人もいれば、もっと点数が入ると思ったという人もいたのが、スズキ「アルト」だ。高い評価を得た結果として、本賞のほかに設定されているスモールモビリティ部門賞を416点という圧倒的な高得点で受賞している。2台の本命が接戦を演じた本賞でも、10点を投じた選考委員が4人もいた。

大健闘だったのが、イノベーション部門賞を受賞したテスラ「モデルS P85D」だ。自動車メーカーとしての設立が今世紀に入ってからという短い歴史であり、日本に上陸したのもまだ記憶に新しい。試乗車の台数も少ない中、10ベストの選考までに選考員のほとんどに試乗する機会を設けるなど、コツコツとクルマの良さを伝えた努力が実って、372点という高得点を獲得した。本賞でも、最高点の10点を投じた人が4人いたというのも、このクルマの実力の高さを物語っている。

実は、本賞に負けず劣らずの接戦だったのが、「インポート・カー・オブ・ザ・イヤー」だった。本賞が国産車である場合に、輸入車の中で最も得点の高いクルマに与えられる。なにしろ今年は、10ベスト常連のフォルクスワーゲンとメルセデス・ベンツが不在という異例の状況だった。

下馬評では、BMW「2シリーズ・アクティブツアラー/グラン ツアラー」とジャガー「XE」が本命とされていた。開票の途中、20人目と40人目の段階で、中間集計が発表されるのだが、20人目ではジャガー57点に対してBMW46点、40人目ではジャガー107点に対してBMW100点という接近戦だった。

結局のところ、最後の20人でBMWが逆転して、28点の差でインポート・カー・オブ・ザ・イヤーに輝いた。BMW初のFFであり、5/7人乗りミニバンともいえるこれまでにない領域にもかかわらず、一貫した「BMWらしさ」を訴えて、クルマ作りにも盛り込んだところはさすがだ。

一方のジャガー「XE」は、新しいプラットフォームを得て、しっとりとした大人のセダンとしての完成度が高い。正統派のセダンでありながら、内外装のデザインや新しいナビシステムなども含めて、非常に現代的な印象になった。しかも、400万円台のエントリーモデルでも、総合力の高さを感じさせる仕上がりだった。

本賞を争った2台と違って、共通点の乏しいこの2台の優劣を決めるのは、あまりにも難しい。選考委員の投票を見ると、0点というう人はBMW14人、ジャガー16人だ。しかし、BMWには10点満点という人が2人いるのに対して、ジャガーは満点を投じた人はいない。

次ページ実行委員の努力にも注目だ
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