JFEホールディングスは半導体子会社譲渡完了で10月の新体制固まる

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JFEホールディングスは半導体子会社譲渡完了で10月の新体制固まる

国内高炉2位のJFEスチールを傘下に持つJFEホールディングスは、10月1日にグループの形を様変わりさせる。事業ドメインの練り直しのなか、鉄に関わる分野に経営資源を集中させることになる。

100%子会社の半導体事業である川崎マイクロエレクトロニクスを7月1日付で譲渡、同じく子会社の造船事業であるユニバーサル造船は10月にIHIマリンユナイテッドと合併し、ジャパンマリンユナイテッドという社名の持分会社となる。一方、JFEスチールが38.5%出資するJFE商事は、10月にJFEホールディングスの100%子会社となる。

グループの形を再編前と後で比較するとこうなる(いずれもJFEホールディングスの出資比率)。

<2011年4月>
JFEスチール(100%)
JFEエンジニアリング(100%)
川崎マイクロエレクトロニクス(100%)
ユニバーサル造船(84.9%)

<2012年10月>
JFEスチール(100%)
JFEエンジニアリング(100%)
JFE商事(100%)
※持分会社でジャパンマリンユナイテッド

この7月にファブレスLSIメーカーのメガチップスが85億円で100%子会社化したのが、川崎マイクロエレクトロニクス。メガチップスの創業者である進藤晶弘氏は、1991~93年まで日本鋼管(JFEの一方の前身)にいた経歴があり、同社の最初の顧客が日本鋼管。進藤氏は日本鋼管の電子デバイス研究所の立ち上げに尽力した経緯もある。川崎マイクロ自体は09年度のファブレス化以来、前期17億円の営業利益を出すなど安定して利益を上げるようになっていたが、事業ドメインの見直しのなかで、メガチップスに譲ることになった。任天堂依存度の高い同社は、これにより、新規顧客と海外商圏が手に入るほか、人材面の強化も狙いとみられる。

10月には造船事業の大合併が実現。JFEと日立造船が出資するユニバーサル造船が、IHIマリンユナイテッドと合併。売上高は4000億円規模となる見込みで、今治造船と並び国内首位級となるジャパンマリンユナイテッドが発足する。調達力拡大、生産性向上で国際競争力回復を狙うが、45.9%出資の持分会社となるため、経営の独立性は高まる。中国、韓国勢に圧倒され、2014年には造る船が激減する見通しという厳しい環境だが、持分会社として収益リスクが出資見合いに低減することにもなる。

一方、ホールディングスの事業規模を大きく膨らませそうなのが、JFE商事の子会社化。前期の連結売上高2兆0865億円、営業利益167億円を誇る事業を完全子会社化するため、ホールディングス自体の売り上げ、営業利益とも大きく膨らみそうだ。今後は、海外の鋼材加工拠点や最終的なデリバリーも含め、ホールディングスの下で展開していくことになりそうだ。また、原料炭中心に原料権益も豊富に持つだけに、上流分野の拡大も狙えそうだ。

ほかに、JFEスチールの下に4社あったグループ電炉(豊平製鋼、東北スチール、ダイワスチール、JFE条鋼)が4月に統合され、JFE条鋼として再スタートを切っている。また、前期末からインドの鉄鋼大手であるJSWスチールも持分会社化しており、グループに貢献してきそうだ。

この新体制の業績がどうなるのか。「会社四季報」夏号(6月15日発売)では表記のとおり予想したが、会社見通しはまだ出ていない。7月26日に予定される12年4~6月期決算発表時に開示があるのかどうか、注目されるところだ。

なお、今月4日からの株価下落の原因となった増資観測に関して、会社側はきっぱりと否定。大規模な投資となるはずのベトナムなど新興国での一貫製鉄所建設計画についても、じっくり取り組んでいる状況で、4月20日の中期計画発表時に説明したとおり、あくまでも内部留保中心で利益を積み上げてからという方針のようだ。

(山内 哲夫 =東洋経済オンライン)


《東洋経済・最新業績予想》
(百万円)    売上高  営業利益 経常利益  純利益
連本2012.03  3,166,511 44,779 52,977 -36,633
連本2013.03予 3,500,000 140,000 152,000 84,000
連本2014.03予 3,900,000 170,000 188,000 104,000
連中2011.09  1,569,313 52,911 50,638 -24,311
連中2012.09予 1,520,000 54,000 58,000 32,000
-----------------------------------------------------------
         1株益¥ 1株配¥
連本2012.03  -68.7 20 
連本2013.03予 156.1 20-30 
連本2014.03予 193.2 20-30 
連中2011.09  -45.8 10 
連中2012.09予 59.5 10-15 
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