2016年相場は「3年、30%、300兆円」に期待 年内慎重ムードで日経平均の上値は限定的

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③株式と投信残高300兆円乗せ

国内の個人マネーが1700兆円超、そのうち1000兆円近くをシニア層が握っている。14年にNISA(少額投資非課税制度)がスタート、株式や投信等のリスク資産へ5兆円超が移った。14年秋には年金マネーも動いた。140兆円近くを運用するGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)が国内株の基本比率を12%→25%へ引き上げた。16年にはジュニアNISAも始まる。ただ、貯蓄から投資への施策としてはやや力不足の印象を受ける。

そのなか、金融庁が16年度の税制改正でテコ入れを講じようとしている。相続時の上場株評価額を3割引き下げる(100%→70%)ことを要望、改正が認められれば来春にも実現する。国税庁によると13年の相続財産額は12兆円超に上るが、上場株の相続は0.8兆円台(約7%)にとどまる。土地や建物に比べ、上場株は流動性や換金性も高く小口分散できる利点がある。仮に税軽減となれば株式での相続も増えるだろう。

株の非課税枠や節税枠を活用

なお、個人マネーの国際比較では、リスク資産比率が欧米の20%台半ば~40%台に対し日本は16%台と低い。仮に税制改正等を機に個人のリスク資産比率が20%前後まで高まれば、株式や投信残高の300兆円乗せも見えてくる。特に富裕層ほど税金には敏感だ。今後はベテラン投資家だけでなくビギナー投資家にも、株の非課税枠や節税枠の活用は徐々に浸透していこう。流行語も15年の『爆買い』から16年は『枠買い』か。

安倍政権が掲げるサンフレッチェ(新・三本の矢)のハードルは高そうだが、まずは日本株の押し上げにつながる16年のトリプルスリー(3年、30%、300兆円)に期待したい。さて、日本株の12月相場は08年(リーマンショック)~13年まで6年連続高、14年の小幅安を除けば、比較的堅調といえる。ただ、2万円前後では個人の損益通算売りやメガバンク等の持ち合い解消売りが上値を押さえそうだ。

12月上旬、ECB(欧州中央銀行)理事会の肩透かしとOPEC(石油輸出国機構)総会の緩慢な結果から、日本株は1万9400円台まで下振れした。今週(12月7日~11日)に入り、WTI原油(1バレル)は6年ぶりの安値となる一時37ドル台まで急落。原油安は企業収益や家計に恩恵をもたらす一方、日銀の物価上昇目標(2%)や安倍政権の名目GDP目標(600兆円)の足かせとなる。

来週(12月14日~18日)は日銀短観(12月調査)、米FOMC、日銀金融政策決定会合を控える。米国では11月雇用統計の良好な結果を受け、12月中旬に利上げの公算が高まっている。市場参加者の慎重姿勢が漂う中、年内の日経平均は上値が限定的だろう。当面の下値ゾーンとして75日線、3月月中平均、200日線のある1万8700円~1万9400円が意識される。

中村 克彦 みずほ証券 シニアテクニカルアナリスト

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なかむら かつひこ / Katsuhiko Nakamura

IFTA国際検定テクニカルアナリスト(MFTA)、日本テクニカルアナリスト協会(NTAA)評議員。

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