アマゾン来襲に先手、楽天が投入する電子書籍の成否

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一方、ネット通販の主力が日用品や食品である楽天が、自ら端末を投入してまで電子書籍事業を手掛けるのはなぜか。それは、今後スマートフォンやタブレットがネット接続の主戦場となる中で、自前の端末を持つことで楽天のサービスへ誘導したいとの思惑があるからだろう。昨年8月にはパナソニックなどの専用端末向け書籍配信サービスを始めていたにもかかわらず、コボ社買収に打って出た理由はそこにある。

現時点でキンドルの上陸時期や投入端末は明らかになっていない。が、4日に行われた楽天市場の出店者向けイベントで三木谷社長は早くも、カナダなどで販売されている、キンドルファイアの対抗機種「コボボックス」の投入に触れた。販売時期こそ明かさなかったが、同端末に楽天市場専用のアプリケーションを搭載する構想を示した。コボタッチで購入したコンテンツをスマホで閲覧できる対応も予定しており、スマホでもネット通販との連動が考えられる。

気合い十分のコボだが、一方で課題も残る。日本語書籍をまずは3万冊提供するとしているものの、発売日時点では未達の公算が大きい。また、コンテンツフォーマットに世界標準規格とされる「EPUB3・0」を採用したが、同じ規格でも電子書籍端末メーカーごとに仕様が異なるため、出版社側の電子化コストがかさむ。そのため、楽天が将来の目標に掲げる150万冊をそろえるのは容易ではない。打倒アマゾンのみならず、出版業界といかに良好な関係を作れるかも成否を左右する。

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(二階堂遼馬 撮影:尾形文繁 =週刊東洋経済2012年7月14日号)

記事は週刊東洋経済執筆時の情報に基づいており、現在では異なる場合があります。
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