210億円でモディリアーニ買う中国人の正体 自称「成金」元タクシー運転手が次に狙うもの

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劉益謙氏(写真:Sim Chi Yin/The New York Times)

劉と王がオークションに参加し始めた1990年代初頭、中国のアート市場は生まれたばかりだった。二人は趣味で始めた美術品の収集にのめり込んだ。

中国の人に楽しんでもらうため

劉は中国の芸術作品や工芸品を、王は文化革命時代の作品や現代中国アート、アジア全般のアートを好む。夫妻は西洋の作品の収集も始め、ジェフ・クーンズの彫刻などもコレクションの仲間入りをした。

美術館の設立を考えたのは、自らを「アート狂」と言う王の方だ。夫はそれよりもプライベートジェットなどを欲しがっていたが、「上海のため、そして国のためになる」と説得したという。

クリスティーズの中国地区を率いる蔡金青は、夫妻はこの世代の中国の美術品コレクターの「最たる例」だと言う。「自分たちが知っている中国アートの収集から始め、アジアのアートに広げ、今は西洋のアートだ」。

しかし、劉と王のように自らの富を誇示する収集家は中国ではごくわずかだ。政府がぜいたく品を取り締まっているからだ。株式トレーダーでもある劉は、取り締まりは怖れていないと言い、自分は合法的に富を手にしたと主張する。

夫妻の浪費ぶりを批判する人は多く、審美眼がないという声もある。彼らを語る際によく登場するのが「土豪(トゥーハオ)」という言葉で、「にわか成金」という意味だ。

「私は紛れもなくトゥーハオだ」と、劉は言い切る。「でも少なくとも、このトゥーハオは中国の人に楽しんでもらうために名作を国に持ち帰っている」。

(執筆:AMY QIN記者、翻訳:前田雅子)

(C) The New York Times News Services

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