210億円でモディリアーニ買う中国人の正体 自称「成金」元タクシー運転手が次に狙うもの

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多くの人にとって劉は、タクシーの運転手から大富豪に転身した無作法な人物だ。サザビーズのオークションで明王朝時代の小さ磁器「鶏缸杯」を3630万ドル(約45億円)で落札し、それを実際に使っている写真がネットで広まると、ちょっとした騒ぎとなった。

王は、夫妻が上海に開設した龍美術館の立役者であり、責任者を務めている。20年以上に渡り、夫妻は主に中国の古典と現代の美術作品を膨大に収集し、そのほとんどを同美術館で展示している。

不動産、企業…これからは美術品を買う

劉益謙氏(写真:Sim Chi Yin/The New York Times)

今回の大きな買い物をした数日後には夫婦はいつもの生活に戻り、中国で最も名高いオークションハウス、チャイナガーデンの秋のセールに参加するため北京に飛んだ。彼らが目指すのは、龍美術館をニューヨークの現代美術館やグッゲンハイム美術館と肩を並べるような世界一流の美術館にすることだという。

そして、モディリアーニの裸婦画のような世界一流の作品はほかに類がないと、劉は言う。

「モディリアーニの裸婦画はあらゆる美術館が所蔵を夢見る」と、劉は話す。「こうして今、中国の美術館が世界に知られた名作を所蔵し、国内の人々は西洋の名作を見るために外国に行く必要もなくなった。とても誇りに思っている」

劉はさらにこう言った。「西洋へのメッセージははっきりしている。私たちは彼らの不動産を買い、企業を買い、そしてこれからは美術品を買うのだ」

1917~1918年に描かれたこの作品「横たわる裸婦」を彼が手に入れたことで、そのメッセージは確実に西洋に伝わっているようだ。

「今回の落札で彼は自らの存在を知らしめた」と、オンラインオークションハウス、Paddle8のマネージングディレクター、トーマス・ガルブレイスは言う。「美術界で彼の名を知らなかったすべての人が、今や彼を知っている」。

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