ふるさと納税ブームに潜む地方衰退の「罠」 無視できない、3つの大きな歪みがある

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ふるさと納税の返礼品は多種多様。地方活性化につながると思われがちだが、そこにはいくつもの罠がある(写真:keiphoto/PIXTA)

「ふるさと納税」が話題になっています。そもそも「ふるさと納税」は、地方で生まれ育った人や都市部に住む人が、都市部にいながらふるさとに納税をすることで、地方を応援することになるという税制優遇策でした。

しかし、この数年「税制優遇も受けられ、地方の特産品をもらえてお得」ということで人気沸騰。たとえば、5つの地方自治体に1万ずつ合計5万円を納税すれば、2000円を超える4.8万円が住民税・所得税から控除され、さらに5つの地域から返礼品がもらえるため、個人にとってはかなりお得な内容となっています。2015年度半期の「ふるさと納税」は453億5500万円となっており、前年同期の3.9倍と大きく伸びています。

一方で、地方自治体が「ふるさと納税」を獲得するため、高額の返礼品競争が発生しており、税制としての本質からかけ離れた実情に総務省が警告を出しています。現状のままでは、地方にとっては活性化どころか、産業も財政も含めてマイナスとなる危険性が生まれています。

地方衰退につながる3つの歪み

そこで、ふるさと納税が地方衰退要因となる3つの歪みを指摘したいと思います。

(1) 税金頼みの地方産品の「安売り」が招く歪み

地方にふるさと納税されると、自治体はその返礼品として指定していた地元産品を地元企業・生産者から買い取ります。納税金額の半額などで返礼品財源となっている自治体もあり、多額の地方産品が都市部に送られています。しかし、これは地方産品の価値が正当に認められ、市場取引が拡大しているわけではありません。税制を活用してタダ同然で地方産品を配っているから出荷量が増加し、都市部の地方産品を受け取る側も喜んでいるのです。

一部の人は「お試しで送り、次は買ってもらう。新規顧客開拓だ」と言いますが、そんなに都合よく話は進みません。類似する地方産品はたくさんあるるわけで、一度タダ同然でもらえた商品を正規価格に戻して何度もリピートして買ってもらうのは、かなりの賭けといえるでしょう。

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