ドル・円・ユーロの正体 市場心理と通貨の興亡 坂田豊光著 ~理論分析に不足感あるが幅広い論点を丁寧に記述

ドル・円・ユーロの正体 市場心理と通貨の興亡 坂田豊光著 ~理論分析に不足感あるが幅広い論点を丁寧に記述

評者 中北 徹 東洋大学経済学部教授

 リーマンショック、ユーロ危機など、通貨・財政危機、バブルの発生・崩壊が頻発している。新聞・テレビは通貨情勢の報道に大きな労力をさく。だが、それらの動向がどんな経路と仕組みで、中小企業の事業や個人の預金や年金に影響するのかは、必ずしも明らかではない。底知れぬ不安と、同時に知的渇望を覚える読者は多いはずだ。

本書は、外国為替の実務を体験し、社会人教育に携わり、研究者であるキャリアの持ち主によって書かれた。ドル・円・ユーロに支えられる通貨体制の現状と限界、その闇を浮かび上がらせている。簡明な図表や事例を使い、「グローバルインバランス」の全体像を理解させる。ドルについては、米国の経常収支赤字に歯止めがかからない限り、ドルを基軸通貨とする通貨体制は長続きしないと力説する。では、ユーロにとって代わられるのかといえば、ユーロはまだ露払いでしかないと説く。ドルが基軸通貨であることが通貨危機に際して、「質への逃避」である結果、市場がドルの流動性を欲しがるからだ。

幅広い論点に触れて、相場局面の読み取りなどの記述は丁寧で興味深い。ただ、基軸通貨の理論分析にやや不足を感じる。現状、ドルを仲立ちとして世界すべての通貨間の交換が可能になっている媒介通貨としてのドルの圧倒的な強みに焦点をあてることが重要だ。危機に際して、通貨金融と財政との関係がどのように通底するのか、ユニークな著者であればこそ、異色かつ大胆な見解を開陳してほしかった。このほかにも、アジア地域での通貨統合は文化的・歴史的な理由から困難と断じるなど、アカデミックな見地からすれば、いくつかの難点はあるが、一般ビジネスパーソンが通貨を考えるうえで、本書が大きな助けになることは確かだ。

さかた・とよみつ
中央大学経済学部・同大学院兼任講師。専門は外国為替論、国際金融論。1952年生まれ。中央大学大学院経済学研究科修士課程修了。大和証券投資信託委託、スイス銀行(現UBS)、ナショナル・ウエストミンスター銀行(現RBS)などを経る。

NHKブックス 997円 229ページ

  

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