リーガロイヤル大阪が再開発を延期した裏側 森トラストとの提携を解消、頼みは幻の鉄道

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財務が改善し環境が好転したことによって、今回、大阪本館の土地を270億円で買い戻すとしている。

ただし、ロイヤルホテルに単独で、大阪本館を建て替える体力はない。森トラスト側はロイヤル株で売却損や減損を余儀なくされており、大阪で100億円のサヤを抜いて、提携に幕引きを図るというのが実情ではないのか。

中之島地区の再開発が動き出す?

ロイヤルホテルが自社主導に転換した理由については、「中之島地区の再開発が動き出すのでは、という期待が大きい」(同社関係者)。

中之島再開発は1989年ごろから検討されていたが、巨額の投資資金の担い手を欠き、進展は一部にとどまる。交通の便が悪く、2008年に京阪中之島線ができたが、主要路線と接続せず、効果は薄かった。

風向きを変えたのは大阪維新の会の台頭だ。2008年ごろから、府知事だった橋下徹氏が、関西国際空港再建の起爆剤として、なにわ筋線の開発を主張。新幹線の止まる新大阪駅と、関空のアクセスを改善することで、大きな経済効果が見込めるとした。このなにわ筋線の中間駅に中之島も想定されている。

ただ、大阪の事情に詳しい、鉄道ライターの森口誠之氏は「なにわ筋線にどれだけの需要があるのか」と、その実現性に疑問を呈する。

ロイヤルホテルは業績や財務が改善したとはいえ、今回の土地買い戻しをすれば、2016年3月末の有利子負債は推計で約370億円、負債資本比率(DEレシオ)は3.7倍に達する。

二つの成長戦略を失った大阪の名門ホテル。先行きの不透明感は高まっている。

「週刊東洋経済」2015年12月12日号<7日発売>「核心リポート06」を転載)

松浦 大 東洋経済 記者

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まつうら ひろし / Hiroshi Matsuura

明治大学、同大学院を経て、2009年に入社。記者としてはいろいろ担当して、今はソフトウェアやサイバーセキュリティなどを担当(多分)。編集は『業界地図』がメイン。妻と娘、息子、オウムと暮らす。2020年に育休を約8カ月取った。

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