「アップル採用」報道で過熱、日韓有機EL戦争 韓国勢が量産化で先行、日本は巻き返せるか

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韓国勢に大きく後れを取ってきた日本メーカーは、2015年1月にソニーとパナソニック、JDIの有機EL事業を統合させ、JOLEDが発足。韓国2社の主戦場を避け、タブレットやパソコン向けで活路を探っている。

だが、有機ELパネルの市場規模約1兆6000億円(2015年見込み、IHSテクノロジー調べ)のうち、約1兆3000億円はスマホ向けだ。ここに食い込まなければ、大きな成長は望めない。

「これまでアップルのまねをすることでシェアを伸ばしてきた中国のスマホメーカーは、アップルが有機ELパネルを採用すれば追随する可能性が高い」(液晶パネルメーカー)。スマホ向けディスプレーの需要が今後、液晶から有機ELにシフトすると見る向きも少なくない。

そうなれば、売上高の8割をスマホ用液晶パネルが占める、JDIへの影響は甚大。実際、そうした懸念から、アップルが有機ELパネルを採用するとの一報が流れた11月26日、同社の株価は一時、前日比で10%下落した。

日本勢は間に合うか

ディスプレー業界に詳しいIHSテクノロジーの早瀬宏アナリストは「日本メーカーは有機ELパネルを用いた最終製品の発売に踏み切れず、買い手も見つけられなかったため、これまでは開発資金を十分に用意できなかった。が、アップルの有機ELパネル採用が引き金となり、今後は開発が加速度的に進むのではないか」と見ている。

アップルは部品を複数社から調達する方針を採っており、有機ELでも複数の供給元を確保しようと動くはず。製造技術の流出を嫌うサムスンが供給元になる可能性は低い。JDIは2018年の量産開始を目標に、試作品の生産を2016年にも始めるとみられる。

供給元として候補に挙がるLGと並び、日本メーカーが食い込むことはできるか。残された時間は短い。

「週刊東洋経済」2015年12月12日号<7日発売>「核心リポート05」を転載)

田嶌 ななみ 東洋経済 記者

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たじま ななみ / Nanami Tajima

2013年、東洋経済入社。食品業界・電機業界の担当記者を経て、2017年10月より東洋経済オンライン編集部所属。

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