法務省の委託企業が給料未払いで業務継続を断念 同省の責任論浮上も

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そもそも2社が法務局の登記簿公開業務を担うようになったのは、政府による市場化テスト(官民競争入札)の導入がきっかけだった。それ以前、同業務は法務省の外郭団体である民事法務協会が一手に受託していたが、行政コストの削減を目的とした競争入札導入をきっかけとして、低価格で応札した民間企業へ次々と委託先が変更。法務局の業務では全国で最も多くの業務を受託したのがアイエーカンパニーだった。

しかし、アイエー、ATG両社とも本店登記地に事務所が実在していないなど業務運営がずさんだったうえ、厚生年金の未加入や年金保険料の過小納付、残業代の未払いなどの不正が次々と発覚。昨年5月には、情報の目的外使用などを理由に一部業務停止処分を受けた。

 今年1月には民事法務協会労働組合の刑事告発に基づき、厚生年金保険法および健康保険法違反で東京地検から略式起訴処分(罰金支払い命令)を受けている。そして今回、ついに事業継続断念という事態に至った。

今般、両社に全業務の停止処分が下ることについて、民事法務協会労働組合の衛藤紀代美委員長は「不良企業が結果として排除されたことは大きな前進だ」と評価する。その一方で給料の不払いなど深刻な問題が残っていることから、監督官庁の法務省に対して「問題解決を求めていく」(衛藤委員長)としている。

 社員の一人は「7月以降、年金や健康保険はどうなるのか説明もない。6月分の給料が払われる保障もないまま、7月も引き続き仕事を続けてくださいという法務省の姿勢はあまりにも無責任だ」と批判する。今後、法務省や内閣府の責任が問われる場面がありそうだ。

※7月2日法務省が両社に対する全業務停止処分を発表(リリースはこちら

(岡田広行 =東洋経済オンライン)

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