【産業天気図・半導体】DRAM価格急落で今期下期は「曇り」。来期も戻り鈍く「曇り」か

半導体の2007年度後半は「曇り」、08年度も「曇り」と予測する。
 07年度後半は、パソコンや携帯電話によく使われる記憶装置のDRAMの流通在庫がだぶつき、一般的なDRAM「DDR2(ダブル・データ・レート・ツー) 512メガバイト 667メガヘルツ」のスポット価格が6年ぶりに1ドルを割り込んだ。米マイクロソフト社の新OS(基本ソフト)「ウィンドウズ・ビスタ」を当て込んで作り過ぎた流通在庫が現在も相当数しこっており、それが市場価格の下押し要因となっている。そうした流通在庫は3億個とも5億個とも言われている。この数は年間需要の1割から2割に相当する巨大さだ。台湾や韓国の投機筋が余剰在庫をキャッチボールをしているために、価格に下押し圧力が生じていると見られる。
 DRAM世界最大手の韓国サムスン電子は、11月28日にソウルで開催した技術会合で「DRAMの供給過剰は08年後半にも緩和されるだろう」との見通しを配布資料に明記した。裏を返せば、それまではDRAM価格は空前の安値で推移すると見られる。原文は以下のとおりである。
 “In 2008,DRAM oversupply is expected to ease, especially in 2H.”
 DRAM価格の空前の安値の影響は、DRAMメーカー、同検査装置メーカー、そして半導体商社へと次々に波紋を拡げている。国内唯一のDRAM専業メーカー、エルピーダメモリ<6665>は、1ギガバイト品への生産切り替え時期と重なることもあり、今08年3月期は第3四半期(08年1~3月)に営業黒字が確保できれば「御の字」といった状況だ。会社側は業績予想を開示していないが、「四季報速報」では、下期の営業利益は上期の半分と見て、通期営業利益予想を147億円と前期の4分の1以下に減額した。
 DRAM検査装置世界最大手のアドバンテスト<6857>は、上期の受注急減を受けて、10月26日の07年9月中間決算発表時に、今期の通期営業利益計画を従来の600億円から470億円に下方修正。前期比増益計画から一転、減益予想となった。アドバンテストの丸山利雄社長は、「DRAMメーカーやテストハウス(検査代行会社)が投資を見送ったことが大きい。台湾のファウンドリ(生産受託会社)も保守的で、なかなか注文が出てこない」と嘆いている。
 独立系外国製半導体商社で最大手の丸文<7537>は、10月19日に通期業績見通しの修正を発表。前期比横ばいとしていた営業益の期初計画65億円を、53億円に下方修正した。丸文の佐藤敬司社長は、「DRAM価格下落のインパクトが大きい。上期の価格下落は相当厳しかった。下期は上期よりも高くなると見ていたが、下期も相当厳しい」と悲観的な市況見通しを示す。
 このほか、サムスン製半導体取り扱いで国内首位のトーメンデバイス<2737>の石川静香社長は、「今後のDRAM価格は悲観的に見ている。サムスン以外のメーカーの撤退が起こる可能性が1年以内にある」と語っている。
 ウィンドウズ・ビスタの推奨する最適な動作環境は、DRAMの記憶容量で2ギガバイト以上。ビスタ効果の火がつけば、同じパソコンの販売台数でも、DRAMの搭載容量は従来比で2倍以上になる。周辺機器などへの相乗効果は計り知れない。08年1月にはビスタ発売から1年経過となる。通常であれば、初期のバグ(不具合)がなくなるなどして製品的にこなれてきて、そろそろ法人需要が盛り上がってこようというタイミングだ。しかしここにも暗雲が垂れ込めている。サブプライムローン(米国の信用力の低い個人向け住宅融資)問題である。先行きへの不安から、米企業を中心に「間接経費の削れるところから削ろう」という気運が高り、本格的な法人需要拡大に火が付くのはさらに先になりそうなのだ。
 一方、主にiPodなどの携帯音楽端末に使われる記憶装置のNANDフラッシュメモリは品薄感が強く、価格も高水準を維持してきた。笑いが止まらないのはNAND世界2位の東芝<6502>だ。半導体事業は07年9月中間期、前年同期の営業利益649億円とほぼ同じ651億円と高水準の営業黒字を確保した。また、DRAM価格の下落で部材仕入れコストが低下したことで、パソコン事業は前年同期の営業赤字74億円から、今上期は173億円の営業黒字と大幅に黒字化した。東芝は01年にDRAMから撤退済み。東芝にとっては、「NAND高・DRAM安」という強烈な追い風が吹いた上半期だった。ただ、今後については、クリスマス商戦向けの作り込みが終了したために、08年1~3月期は需給の大幅緩和でNAND価格が下落すると見るアナリストは多い。携帯音楽端末以外のアプリケーション(応用製品)の拡大がカギだが、iPodを超えるほどの大型商品が忽然と現れると見るにはかなり無理があり、今後に暗雲が垂れ込め始めている。
 
●半導体製造装置は明暗が入り交じり●
 ただ、半導体製造装置メーカー各社への影響は一様ではない。
 まずは好調組から。世界一のウエハ切断・研削・研磨装置メーカーのディスコ<6146>は、消耗品のダイヤ砥石が思いのほか好調なうえに、韓国・台湾メーカーからの受注が高水準であることから、今期の通期営業利益予想を期初計画の200億円から約1割増しの219億円に上方修正した。
 半導体のエッチング装置で世界最大手、半導体製造装置全体では世界2位の東京エレクトロン<8035>は、DRAM、NANDメーカー向けに好採算の半導体製造装置が好調で、07年9月中間期の営業利益は計画の770億円を大きく上回る950億円だった。会社側の下期見通しでは、好採算の半導体製造装置を期初計画よりも見通しを下げ、低採算のFPD製造装置の比重が増えるため、期初の通期営業利益1600億円計画は不変としているが、「四季報速報」では通期でも増額余地が十分あると見て、通期営業益は1650億円と予想している。
 測長SEM大手の日立ハイテクノロジーズ<8036>は、液晶用製造装置は客先の投資抑制で落ち込みが顕著だが、医用分析装置が欧州向けに順調。半導体製造装置もそこそこ健闘している。会社側は、今期の営業利益見通しを、期初計画の420億円から430億円に上方修正したが、「四季報速報」ではまだ上乗せ余地があり、465億円程度まで行くのではないかと見ている。
 同じく日立製作所系の日立国際電気<6756>は、半導体製造装置が韓国・台湾向けに好調を持続。今期の通期営業利益予想を期初計画の155億円から174億円に上方修正した。しかし「四季報速報」ではまだまだ伸びると見て184億円を予想している。なお、日立国際電気は08年3月期から装置輸出の会計処理を出荷基準から設置基準に変更。この影響で営業利益が14億円目減りしている。裏を返せば、来09年3月期はこの目減り分の下駄を履いてのスタートとなるので、今期との比較では高い伸びが期待できる。「四季報速報」では09年3月期の営業利益を204億円と予想しているが、これはかなり保守的な見方で、今後の動向次第で上振れる余地は十分ある。
 一方で、液晶用洗浄装置やTAB実装・DVD成膜・同貼り合わせ装置で世界一の芝浦メカトロニクス<6590>は、今期の通期営業利益計画を39億円から29億円に下方修正した。半導体向けは堅調だが、液晶用や太陽電池用で客先の設備投資が一部延期されたためだ。それでも前期は16億円の営業赤字だったから、黒字確保は明るいニュースと言える。半導体用ワイヤボンダ(結線装置)で世界シェア2割の新川<6274>では、DRAM向けが低調なほか、NAND向けも客先が投資を延期。今期の通期営業利益は、前期比増益としていた期初計画の44.4億円から36.5億円へと下方修正、前期比減益となる。
 さらにつぶさに見ると、ハイテク関連ということで一時もてはやされた半導体製造装置ベンチャーは、グローバルな競争激化により優勝劣敗が鮮明化し、不安だらけといえそう。電子ビームを用いた半導体フォトマスク用寸法測定装置で世界首位のホロン<7748>は、上期の測定装置販売台数はゼロ台。新規参入のLED製造装置の上期売り上げ計上をめぐり、新たに就任したアーク監査法人ともめて決算発表が遅れ、結局はその計上を下期以降に見送った。このLED装置は上期2台、下期3台見込んでいたが、結局上期からずれ込んだ下期の1台にとどまりそうだ。測定装置はもともと上期ゼロ台、下期3台の計画で下期の比重が大きいが、11月22日に通期営業利益計画を5700万円から1000万円に下方修正した。前期に続き、今期も営業赤字の可能性が高まっている。
 シリコンウエハ側面、表・裏面検査装置大手のレイテックス<6672>も、ホロンほどではないが見通しは厳しい。検査装置は堅調だが、大幅に伸ばす計画の測定装置は出足が鈍く、08年5月期の営業利益5.6億円確保には未達懸念が浮上してきている。
 なお、3カ月前の前回予想では、北京オリンピックに向けた家電・AV機器類の需要増やビスタの普及などを前提に、来08年度前半は「晴れ」と予測していた。が、通期を見通した場合、米国景気の先行きが不透明なこと、また08年度後半はオリンピック需要の反動減が懸念されることなどから、雲行きはかなり怪しそうだ。これらの理由から08年度通期の見通しは「曇り」とする。
【山田 雄一郎記者】

(株)東洋経済新報社 四季報オンライン編集部

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