セミナーレポート

リスク、ガバナンスの視点で紐解く不正対策への処方箋 落とし穴に陥らないために、取り組むべき経営課題、財務戦略の実際

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ビジネスの多様化、グローバル化の進展に伴い、企業経営を脅かすリスクも多様化、複雑化の度合いを深めている。クロスボーダーのM&Aが増える中、とりわけ重要なのが不正対策だ。グローバル財務マネジメントの観点から経営課題とリスクマネジメントを検証した「グローバル財務マネジメントフォーラムin大阪『なぜ企業の不正は繰り返されるのか?』」が11月、大阪市で開かれた。

主催:東洋経済新報社
協賛:キリバ・ジャパン
協力:デロイト トーマツ コンサルティング

基調講演
「内外のバランス経営が生み出す企業価値」

京都大学大学院
経営管理研究部 教授
川北英隆

京都大学大学院教授の川北英隆氏はまず、日本経済の立ち位置を振り返り、経済成長をもたらす技術進歩、労働投入量、資本投入量の3要素に注目。企業成長と経済成長の間にかい離が生じていることを例証し、「今後、企業間格差は大きく広がったまま推移するだろう」という見通しを示した。そして企業経営の選択肢として「営業レバレッジ」「財務レバレッジ」「経営力の向上」などを挙げた。

こうしたことを踏まえたうえで、京都の企業の特色として「高い加工技術」「オリジナリティ」「グローバル意識」「トップのリーダーシップ」などを列挙。さまざまなデータに基づいて京都の企業が営業利益率や株主資本比率などが高いことを実証した。そして「株主資本比率が高く手元資金が豊富なために、リーマンショックにも耐えられ、その資金が積極的なM&Aの原資にもなっている」と指摘。さらに今後の企業経営に必要なものとして、「資本コストの明確化」「リスクの把握と対策」「経営を支える外部の知恵の活用」を挙げ、リーマンショックのようなリスクが発生したときのエスケープルートを想定していくことの重要性を強調するとともに、「自社とは異なる観点の人の知恵は、ナビゲーションとブレーキの役割を果たす。コーポレートガバナンスの視点では社外役員がそうであり、スチュワードシップ・コードの側面では、自社に対し長期に投資する投資家との対話も重要だ」と述べた。

顧客事例
「日東電工がグローバルレベルで取り組む
資金の見える化と再分配」

日東電工
経営統括部門
経理財務統括部 財務部長
兼 資金管理グループ長
塩路隆太

日東電工
経営統括部門
経理財務統括部
財務部資金管理グループ
係長
奥村 愛

日東電工
経営統括部門
経理財務統括部
財務部資金管理グループ
係長
冨尾恒一

●インタビュアー
キリバ・ジャパン
秋山 進之介

日東電工は今年11月、キリバの資金管理モジュールを導入して「資金の見える化」を実現した。その背景や目的などについて、キリバ・ジャパンの秋山進之介氏がインタビューする形で、顧客事例についてのセッションが行われた。

この中で日東電工の奥村愛氏は「海外27カ国における約100社のグループ企業が、約100行の銀行と取引を行い、口座数は約1000に及んでいる。日本、中国、欧州ではプーリングシステムが稼働しており、域内での『資金の見える化』はある程度できていたが、グローバルになると可視化できていなかった。今後、M&Aなどで大きな資金需要が発生することも考えられ、グローバルな資金の偏在を把握する必要があった」と語った。

またシステム概要や導入プロセスについては、冨尾恒一氏が「まずメインバンクである三菱東京UFJ銀行での、28社の100口座を対象に、キリバの資金管理モジュールを導入した。銀行による効率的な口座データの収集と要件定義、トレーニングなどでは、キリバのサポートによって約3カ月半で導入できた。これからほかのグループ会社や取引銀行にも展開していく計画だ」と説明した。

さらに導入プロジェクトを推進した塩路隆太氏は「リーマンショック直後に発行した社債が昨年、償還期を迎えた。大きな資金需要があるときも資金オペレーション業務や為替管理業務は表計算ソフトベースで行っていたが、それではリアルタイムで全体が見えてこない。財務システムへの投資は直接的な経済的リターンがないので企業は消極的になりがちだが、当社の場合、CFOが積極的に旗を振ってくれた」とし、「マルチバンク型のシステムで多言語対応であること、クラウドベースであること、そして可視化という面でも優れていたので、キリバのソリューションを選択した」と語った。

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