マツダが目指す自動運転は人間を高みに導く 機械と人間はどうやって意思疎通できるのか

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自動運転では、ドライバーと自動車だけでなく、歩行者や周りのドライバーに対してもコミュニケーションが必要になる

稲垣:そのとおりです。高速道路を走行中に、隣の車のドライバーが一所懸命にパソコンを使っていたら「まじめに運転しているのか」と心配になりますが、外から見てその車が自動運転であることがわかればいいですよね。また、歩行者にしてみれば、近づいてくる車が自分を認識しているかどうかがわかるだけで安心できるはずです。

しかし、周りの人たちに、この車が周囲をどのように認識しているかを伝えるのはかなり難しい。交差点で対向車に対して、ドライバーがアイコンタクトやジェスチャーで右折を促す場面がありますね。このようなコミュニケーションを自動運転で実現するには通信を使わないとうまくいかないでしょう。航空機の場合は空中衝突を回避するために通信を使っています。

清水:車で言えば車車間通信ですね。

最も気になる、レベル2のインターフェース

稲垣:航空機では「TCAS(航空機衝突防止システム)」と呼ばれるシステムを使っています。衝突回避のためにはどちらの航空機が上がり、どちらが下がればよいのかを双方で計算し、結果を伝え合います。一方の航空機が「上がる」と伝えると、もう一方は「了解。では、当方は下がる」と返します。このように双方の合意が取れて初めて、パイロットに上昇や下降の操作指示が出るのです。事前の合意形成なしに、こうした回避行動を取るのは難しいでしょうね。

清水:自動運転におけるHMIで、稲垣先生が最も気にしているのはどういったところでしょうか。

稲垣:レベル2のインタフェースです。制御は車が行うけれど、人間には監視義務がある場合のインタフェースは、今の車で見られるようなインタフェースでは話になりません。自動運転システムが周囲の状況をどう理解し、これからどのような行動をとろうと考えているのかを、どのように伝えてドライバーに理解させればよいのか。

それらをドライバーがうまく理解できたなら、システムの考えとドライバーの考えが違うとき、「システムがそう考えるなら、私が代わりに運転する」という判断もあるでしょう。だからこそ、機械が何を見て何を考えているかを的確に伝えるインタフェースが必要不可欠なのです。

清水:これまでの印象では、自動車メーカーはHMIを競争領域に位置付けているようです。航空機業界ではエアバスとボーイングで思想が異なったわけですが、自動車メーカーの数は航空機メーカーの比ではありませんから、競争領域になれば多種多様なシステムが出てくる可能性が高い。そうなると車を乗り換えるたびに勝手が違うといった事態が起こりかねませんから、ドライバーとしては共通の仕様にしてほしいところですが、切磋琢磨してよいものが生まれるのも事実で、その線引きは難しいですね。

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