ミドリムシジェット燃料、実用化へ動き出す ユーグレナが30億円で実証プラント建設

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航空燃料用途とするには大量に安定的に供給する必要があるが、実証プラントの段階では現状の石垣島の生産量で十分カバーできるという。実証プラントの生産量は年間125キロリットル相当で、飛行距離にすると羽田―伊丹間を週に1便程度という。

今プロジェクトのカギとなるのは、バイオジェット燃料のASTM(米国の材料試験協会が策定する規格)の認証取得と、次世代ディーゼル燃料の開発だ。

次世代ディーゼル燃料では100%バイオを目指す

「ミドリムシで世界を救う」と意気込む出雲充社長(中央)(撮影:風間仁一郎)

バイオジェット燃料を航空会社に供給するにはASTM認証が必須。まずアイソコンバージョンプロセス技術が2017年には認証を取得する予定で、それに準拠して建設されるユーグレナのプラントも認証を取得できる見込みだ。

また、ディーゼル燃料では、現在、軽油に5%までの混合が認められているが、次世代型では100%バイオ燃料での運行を可能にするという。

そのために突破しなければならない壁は2つある。大量に安定的に製造することと、法規制だ。ミドリムシだけでは2つの燃料をまかなうのは難しい可能性がある。コスト面での限界もあり得る。そのため、このプラントでは、ミドリムシ由来以外の微細藻類や非可食植物油脂、遊離脂肪酸(油脂精製工程から出る副産物)なども原料として使用できるようにするという。

法規制対応のほうはバイオジェット燃料、ディーゼル燃料とも現在進行中。これをクリアできれば、2020年の目標「有償フライト」「公道走行」はぐっと現実味をましてくる。

2020年以降の「本格的な商用化を目指す段階に入れば現在の400倍程度の生産能力が必要となる。この設備をどうするかは今後の課題で、立地も含めて現時点では未定」(永田暁彦ユーグレナ取締役経営戦略部長)という。

CO2削減とコモディティである石油依存からの脱却によるコストの安定化。ふたつの夢が2020年に実現するかどうか、この実証プラントの成否にかかっている。

小長 洋子 東洋経済 記者

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こなが ようこ / Yoko Konaga

バイオベンチャー・製薬担当。再生医療、受動喫煙問題にも関心。「バイオベンチャー列伝」シリーズ(週刊東洋経済eビジネス新書No.112、139、171、212)執筆。

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