南沙を巡る争いは、台湾存続の命取りになる 領有権巡り「フィリピンが敵」という自己矛盾

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中国が最近埋め立て工事を行ったのはそのうち赤瓜礁(ジョンソン南礁)、永暑礁(ファイアリー・クロス礁)、渚碧礁(スビ礁)、美済礁(ミスチーフ礁)などである。

台湾が実効支配しているのは「太平島」だけだ。

実効支配していても他国が領有権を主張してくることがあり、現実に衝突も起きている。

このような状況は南沙諸島以外でも起きており、南シナ海全域において衝突が起きている「活火山」と、主張の対立はあるが表に出ていない「休火山」があるわけだ。「太平島」は休火山の一つである。

なぜ全域の領有権を主張しているのか

さらに問題なのは、東南アジア諸国と違って中国と台湾は南シナ海全域について領有権を主張していることだ。これには歴史的経緯がある。

国民党政府は台湾へ逃れてくる以前の1947年に、南シナ海のほぼ全域を11本の点線で囲み、中華民国の領域だと主張し始めた。「十一段線」と呼ばれていたものだ。

中国は1953年に、それから2本を取り除いて9本にした。これがいわゆる「九段線」だ。このような変更を加えたのはフランス、後には米国と戦っていたベトナムの立場に配慮し、一部を譲ったためであったが、南シナ海のほぼ全域を領土だと主張していることに変わりはなかった。

その後も中国は「九段線」の主張を維持しており、台湾は「十一段線」の立場を変えていないが、台湾は、中国と違って、そのように大風呂敷を広げると台湾に不利になることを認識し、「太平島」だけの実効支配にとどめていた。つまり、南シナ海全体については領有権主張を表に出さず、公海であることを受け入れている振りをしていた。

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