日本最先端の「離島」に進化!海士町の秘密 教育で一歩先行く島はいかにして生まれたか

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「ある子どもは、それまで夏休みの度に松江にあるおばあちゃんの家まで行き、そこから塾に通っていました。しかし、今は子どもたちは家のパソコンやiPadで授業を受講することができます。受講料も回数に応じて月2000円や4000円などと割安です。

また、遠隔授業を行ってみてよかったことは、1学年10人程度と非常に閉鎖的な環境にある中で、遠隔授業で各離島の子どもたちを繋ぐことによって硬質化した環境に刺激を与えられるということです。切磋琢磨できるんですね。

ただ、遠隔授業の場合、対面と比べるとコミュニケーションの質が異なり、ドライになりやすいというデメリットがあります。そのため、月1回は島前三島をまわり、対面学習会を実施しています。現時点で、遠隔授業を行ううえで不足しているものは、常設のスタジオがないことくらいです。インフラ的には、光回線が通っていて、iPadも受講希望者には無償で貸与できています。生徒たちにとってiPadは遠隔授業のツールということに留まらず、まさに”世界に繋がる窓”でそこから外の世界を見ることができています」

スカイプで島外の専門家とつながる

また、豊田さんは、離島にいると多様な職業人と直接話ができないことがデメリットだと話す。そこで、事前に子どもたちが何に興味を持っているかを把握しておき、島外にいる専門家とスカイプで繋ぐことをしているという。

例えば、知夫出身で実家が畜産農家をしている子どもが畜産の現状に疑問を持てば、豊田さんが懇意にしている高知県のJAのことをよく知る職員とスカイプで繋ぎ、議論したこともある。

豊田さん自身も遠隔での指導を進めている。来春には、島根大学と一緒に魅力化コーディネーターを育てる講座を設置する予定とのことで、その内の1講座「グローカル人材育成論」を豊田さんが担当する。年15回開催される予定だが、その度に人を松江に集められないので、数コマ以外はオンラインで指導することを考えているという。

海士町では、島前高校に入学するために家族一緒に移住してきている子どももいるという。現在、島前高校の一学年の定員は80人。その内、県外生徒の枠は24人であるため、中には子どもが中学生の頃から家族で移住してきている人もいるという。親は、海士町の自然に惹かれたということだけではなく、子どもの独立心を養いたい、質の高い島前高校の授業を受けさせたい、全国から集まっている豊富な人材が提供するキャリア教育に関心があるようだ。

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