《プロに聞く!人事労務Q&A》リストラ社員の引っ越し費用を負担しなければなりませんか?

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また、実質的には「整理解雇」であっても、会社の経営状況の悪化によって、人員整理を行う場合には、希望退職を募ったり、退職勧奨をしたり、まずは合意による雇用関係の終了を求めることことから進めるのが妥当と思われます。その勧奨にあたり、条件として、帰郷する者については、転居費用の全部又は一部を会社が負担するなどを付すことで、雇用契約の終了が合意に至ることも十分あり得ます。

整理解雇にあたっては、その要件として、通常、経営上の必要性、解雇回避の努力の有無、解雇の対象となる人選基準の合理性、解雇に至るまでの手続の妥当性(十分な説明、協議の度合等)が問われます。こうした要件を満たしているうえでの整理解雇であれば、転居費用の負担義務はありません。

しかし、争う余地があり得ることを想定した場合には、解雇不当として転居費用を含めた損害賠償の請求を受けることもあり得ます。したがって、会社としては、一人を認めることで、他の社員にも同様の措置を講じなければならない等の問題も生じますので、転居費用の支払の有無又はそれ以外の代替案等を含め、合意に至る道を探るのも方法の一つです。なお、この場合には、他の整理解雇された社員との公平性に十分に注意しなければなりません。


 

石澤清貴(いしざわ・きよたか)
東京都社会保険労務士会所属。法政大学法学部法律学科卒。日本法令(人事・労務系法律出版社)を経て石澤経営労務管理事務所を開設。 商工会議所年金教育センター専門委員。東京都福祉サービス第三者評価者。特に労務問題、社内諸規定の整備、人事・賃金制度の構築等に特化して業務を行う。労務問題に関するトラブル解決セミナーなどでの講演や執筆多数。


(東洋経済HRオンライン編集部)

 

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